16年ぶり悲願達成へ清水との国立決戦に臨む東京V・城福浩監督「サポーターと一緒にクラブの願いを叶えたい」

森田晃樹と共に会見に出席した城福浩監督[写真:©超ワールドサッカー]

東京ヴェルディを率いる城福浩監督が、2023J1昇格プレーオフ決勝に向けて意気込みを語った。

11月30日、2023J1昇格プレーオフ決勝に向けた両クラブの監督、代表選手1名による合同オンライン記者会見が実施された。

今シーズンの明治安田生命J2リーグを2位のジュビロ磐田と同じ勝ち点75で終えたものの、得失点差で涙を呑んで3位フィニッシュとなった東京V。これにより、2018シーズン以来の参戦となったプレーオフ準決勝では6位のジェフユナイテッド千葉を2-1で下し、16年ぶりのJ1昇格へ王手をかけた。

そして、12月2日に国立競技場で行われる運命の決勝ではレギュラーシーズン4位で、プレーオフ準決勝でモンテディオ山形を退けた清水エスパルスとの対戦が決定した。

城福監督は質疑応答に先駆けて、「チーム一丸となってここまで来れたので、ホームで戦えることもありますし、多くのサポーターの方と一緒にクラブの願いを叶えたいと思うので、悔いなく我々らしい試合をしたいと思います」と決勝への意気込みを語った。

今季を通じては“昇格”や“優勝”といった具体的な表現を使わず、自分たちの志向するサッカーへの追求にフォーカスしてきたが、悲願達成まであとひとつというこの段階においてもシーズン当初の姿勢を貫いている。

「ひとつは我々自身が、自分も含めて他のスタッフもそういう思いは持っていましたが、自分たちが周りからはそういうふうに思われていないことは十分承知していました。そういうチームではないであろうと思われていることは理解していました」

「あまり具体的な目標を言うのではなく、我々がどういうサッカーを目指しているのか、それが来年J1であろうがJ2であろうが、自分たちはヴェルディのサッカーがどういうものかを形容できるようなサッカーを目指し続ければ、自ずと我々が望むステージに手が届くであろうと思っていました。まずはそこのステージを口にすることなく、我々が目指すサッカーを一日一日というか、毎週続けていくことを大事にしてきました。目標としてのポジションは口にしなかったですし、あくまでリーグ戦のなかで目指すものを毎日取り組み続けてきた延長線上にプレーオフがあると思っています」

今季のリーグ戦で唯一シーズンダブルを喫している清水との対戦に向けては、今回の合同会見に出席したMF乾貴士を「ピッチの中での監督」と評し、J2で抜きん出たタレント軍団のなかでも最も警戒すべき選手と主張。ただ、清水対策を意識しながらも、今季の集大成となるこの一戦であくまで自分たちの積み上げてきたものにフォーカスしたいとしている。

「(清水は)各ポジションの個のレベルは誰が見ても抜きん出ているチームだと思いますし、そういうタレント揃いのなかでもピッチの中での監督として君臨できる、乾選手に躍動されるとなかなか難しいと思うので、そこはチームみんなでしっかりと抑えながら我々が結果を手繰り寄せたいと思います」

「(決勝に向けた調整では)自分たちが42試合のレギュラーシーズンを通してやってきたことを、引き続きやったプレーオフの準決勝だったので、これを変えることなくいつもの通りの準備をして、もちろん対戦相手であるエスパルスさんの特徴を少し頭に入れながらも、自分たちが何を目指してやってきたのかを確認した1週間でした」

「(最も大事なポイントは)通常の我々しか出せないと思います。日ごろから我々がやってきたことの最大値を出す。120%やりますと言ってその通りにやれるのであれば、自分は何万回でもその単語を使います。ただ、我々がやってきた100%しか出せないと思うので、とにかくやってきたことをしっかりと出す。これが一番大事だと思います」

また、今回の決勝ではJ2のレギュラーシーズンでは採用されていない、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が採用される。対戦相手の清水が昨シーズンを含めJ1時代に経験した選手が多くいるのに対して、若手を中心に経験者が少ないという部分で、チームに向けて改めて注意喚起を行う考えだ。

「ほとんどの選手がVARを経験したことがないので、そういう意味ではプレーを止めないであるとか、おそらく流される場面が攻守において出てくるので、ここは注意喚起を再度したいと思います。ただ、練習のなかでも常にそこはプレーを止めないでやるということはやってきているので、その延長線上でいつもより旗が上がらなかったり、笛が鳴らないという状況があるというところは選手たちとしっかりと共有したいと思います」

最後に、城福監督は2008年のJ2降格以降、クラブ消滅の危機や体制変更、成績不振と多くの苦難に見舞われた東京Vの15年ぶんの悔しさを背負って臨む大一番の重要性について問われると、「一番苦しいときに支え続けてくれた人たちを心にとめながら戦わなければいけない」と、指揮官としての強い決意を改めて示した。

「自分はヴェルディに直接関わってきたわけではなく、本当にアウトサイドからの情報でしかないですが、存続の危機に見舞われた15年前だったと認識しています。ヴェルディを潰すことなく存続するために努力してくれた方々がいて、奈落の底に落ちたようなときでも支えてくれたサポーターがいて、どちらかと言えばネガティブな印象しか持たれないようなクラブだったところをずっと支えてきたクラブの関係者と周りのスポンサー、サポーターの方々がいる。その事実があって、こうやって今我々はこの舞台に挑むことができると思うので、一番苦しいときに我々を支え続けてくれた人たちを心にとめながら戦わなければいけないと思っています」

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