長崎原爆資料館 市がリニューアル基本計画素案を公表 核廃絶へ思考、行動促す内容へ

新たな原爆資料館展示のイメージ

 長崎市は30日、被爆80周年の2025年度に予定する長崎原爆資料館(平野町)リニューアルの基本計画素案を公表した。長崎に原爆が投下された背景や核兵器廃絶の道筋などに関する「問い」を展示の中に交えながら、来館者に思考や行動を促す内容。12月11日にパブリックコメント(意見公募)を始める。
 1996年の開館から展示内容は大きく変わっていないが、戦争の記憶の風化や被爆者の減少、核情勢の悪化など「時代の変化」は進んだ。市はこれらに対応するため、リニューアルで「原爆被害を昔の出来事ではなく、自分にも起こり得ることと受け止め、自ら平和を考え、行動につながる資料館」を目指す。
 市は展示の流れを(1)戦争や核兵器で日常が壊されることを「自分事」と捉えてもらう(2)誰もが核兵器のある世界に生き、平和な未来をつくる当事者だと気付いてもらう(3)平和を考え、行動するきっかけをつくる-と設定。
 例えば、(1)は被爆前の日常が分かる展示を充実し、来館者が「当時も同じ日常があった」と感じるようにする。(2)で「なぜ原爆が投下された?」と問いかけ、日本が過去に起こした戦争や原爆開発の歴史などを展示。(3)では「どうすれば核兵器を廃絶できる?」として、核兵器禁止条約や近隣の被爆遺構、平和団体などの情報も紹介した上で、退館時に「核兵器廃絶へあなたはどう行動する?」と投げかける。
 素案は被爆80年以降の中長期的対応も盛り込んだ。所蔵資料に関する被爆者の証言収集を続けるほか、VR(仮想現実)やメタバース(仮想空間)技術を使い、館外からも見学できる「バーチャルミュージアム」構築も検討。平和案内人らの育成や、市民向けワークショップなども進める。基本計画は来年2月をめどに策定する予定。

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