「長崎の証言の会」が原爆資料館リニューアルを特集 市民に開かれた改装議論を

年刊誌「証言2023」を紹介する城臺氏(右から2人目)や山口氏(右)ら=長崎市役所

 被爆証言の掘り起こしを続ける市民団体「長崎の証言の会」は、年刊誌「証言2023 ナガサキ・ヒロシマの声」を発行した。特集では、長崎原爆資料館リニューアルに向けた幅広い提言を盛り込んだ。新たな展示方針や具体的な内容を決める過程に、長崎で活動するさまざまな市民団体・個人の知見を取り入れ、開かれた議論を進めるよう求めている。
 同会は今夏、2025年度のリニューアルを目指す市に対し、(1)物理的被害だけでなく被爆者の精神的・社会的被害の展示の充実(2)市民が所蔵資料を閲覧・活用しやすい仕組みづくり(3)近隣の平和関連施設や被爆遺構との連携強化-などを要望していた。
 特集では要望書全文と、個人の論考4本を掲載。このうち山口響編集長(47)は、所蔵資料の目録を市民に公開し、閲覧の手続きを整備することで「利用者が能動的に関われる場所になる」と提言した。一方、市の同館運営審議会がリニューアルの方向性を検討しているが、市民間の議論は「低調」だと指摘した。
 28日、被爆者の城臺美彌子代表委員(84)らが長崎市役所で会見。山口氏は「長崎には原爆や核兵器に造詣が深く、問題意識を持った個人や団体も多い。知識や思いを生かさない手はない。今後、地元の人を入れた形で具体的な展示づくりを考えられないか」と語った。
 他にも被爆者ら12人の証言を収録。安全保障関連3文書に関する論考集や、昨年死去した森口貢前事務局長への追悼文集も載せた。
 1969年に創刊し通算80冊目。A5判、227ページ。2500円。印刷費高騰で昨年よりも400円値上げした。発行資金確保のため寄付を呼びかけている。問い合わせは同会(電095.848.6879)。
(三代直矢)

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