【SNS特報班】サナギの越冬防げ 害虫のガ「キオビエダシャク」県内被害

宮崎日日新聞に情報を寄せた女性(87)宅で掘り出されたキオビエダシャクのサナギ。被害に遭ったイヌマキは今年に入って枯れ、伐採を決めたという=2022年4月、都城市

 幼虫が生け垣や庭木のイヌマキ、ヒトツバの葉を食い荒らすガの一種「キオビエダシャク」の大量発生について10月17日付で報じて以降、宮崎日日新聞の「SNS特報班」に被害や目撃情報が次々と寄せられている。寒さが強まり日中活動する姿は減ったが、植木の根元には数百ものサナギが潜っていることもあるといい、専門家は「年明け以降の発生を抑えるため、掘り返して冷気に当てるなど対策を」と呼びかける。
 高鍋町の30代の教員男性は11月20日、町内でイヌマキに止まった成虫を発見した。「朝晩寒くなったせいか、少し弱っているようにも見えた」という。
 「取っても取っても追い付かず、諦めた」。都城市下水流町の女性(87)は今年、亡き父が自宅で実生から育ててきたイヌマキ15本が枯れ、伐採を決めた。食害は数年前から続いており、昨春、数本の根元を掘ったところ土中から3、4センチのサナギが2千近く出てきた。「ヒトツバなどの生け垣はゆくゆくは消えてしまうのではないか」と懸念する。
 キオビエダシャクは本来寒さに弱く、県内では約10年前の冬の寒さでほぼ死滅したとされる。しかし、その後も発生、増減を繰り返し、分布域も北や西へ拡大している可能性がある。今夏、自宅の生け垣付近を飛ぶ成虫を目にした日向市迎洋園の男性(78)は「初めて見て驚いた。地域で食害被害を広げないためにも、近隣住民と情報を共有して注意を促していく」と警戒を続ける考えだ。
 キオビエダシャクの生態に詳しい都城市・南九州大環境園芸学部の新谷喜紀教授(昆虫生態学)は「大きな食害被害があり、薬剤散布をしなかった木の根元には数百のサナギが潜っている場合がある」とし、掘り起こして傷を付けたり、冷気に当てたりすることで春までの生存率低下が見込めると指摘。その上で「地域全体での取り組みが、翌年の成虫発生を抑えることにつながる」と強調した。
キオビエダシャク  
 インドや東南アジアを生息地とするシャクガ科のガ。イヌマキ、ラカンマキ、ナギ、ヒトツバの葉を好んで食べ、枯死させることもある。年数回発生し、雌1匹につき、1度に500~千個の卵を木の皮のすき間に産む。薬剤散布は幼虫には効果的だが、土中のサナギには効かない。今年は昨年に続き「まれに見る大量発生の年」とされる。

© 株式会社宮崎日日新聞社