社説:オスプレイ墜落 根本から安全の検証を

 付きまとってきた安全性への不安を決定的に深める重大事故であり、根本から検証が必要だ。

 鹿児島県の屋久島沖で、米空軍の輸送機CV22オスプレイ1機が墜落した。

 海上保安庁などの捜索で、付近の海上で機体の残骸や無人の救命ボートが見つかった。8人搭乗とされ、引き揚げた乗務員の死亡が確認された。国内でオスプレイによる死亡事故は初めてだ。

 米軍と自衛隊が、輸送力の強化を目的にオスプレイの配備、訓練を拡大させる中で起きた事態である。不明者の救助と機体の捜索を急ぐとともに、徹底して原因を究明しなければならない。

 防衛省などによると、オスプレイは米軍岩国基地(山口県)から同嘉手納基地(沖縄県)へ向かっていた。経路上の屋久島空港に米側から緊急着陸を求める連絡があったといい、飛行中に何らかの非常事態が発生したとみられる。

 屋久島沿岸部の住民は、上空を機体が旋回し、火を噴いていたと証言している。住宅地や周辺の漁船を巻き込み、さらなる惨事となった恐れもあり、極めて深刻だ。

 防衛省は、陸自のオスプレイ飛行を当面見合わせ、米軍に対して安全性が確認されてから飛行するよう要請した。当然である。

 ただ、政府は過去幾度もの米軍機事故で、日米地位協定を盾に捜査を拒む米側の原因説明を「丸のみ」し、短期間で運用再開を容認してきた。

 同じ繰り返しでは、国民の命と財産を守る責任は果たせない。米側に詳細な情報開示と共同調査、対応策の協議を求め、日本独自に安全を確認することが不可欠だ。

 オスプレイは事故、トラブルが絶えない。2016年には沖縄県名護市沿岸部で機体が大破。昨年はノルウェー、米国と続き、今年8月のオーストラリアでの墜落事故では3人が死亡した。かねて構造的欠陥を指摘する向きもある。

 今回と同型のCV22は、相次ぐクラッチの不具合事故から昨年8月に米軍が全機を一時飛行停止とし、所有する自衛隊も見合わせた。

 一方で、陸自は南西地域の防衛力強化の一環としてオスプレイ導入を進め、米軍との訓練範囲を急拡大させている。暫定配備した千葉県の木更津駐屯地から、建設中の佐賀駐屯地(佐賀県)に25年に移駐させる計画にしている。

 関係自治体の首長らから強い懸念の声が相次いでいる。住民たちの不安を置き去りにすることは許されない。

© 株式会社京都新聞社