社説:COP28開幕 「地球沸騰」食い止めよ

 現実感を帯びる「地球沸騰化」に歯止めをかけられるか。各国の責任ある対応がこれまで以上に問われよう。

 国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで始まった。

 温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」で地球の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度以内に抑えるとした目標達成には、少なくとも温室効果ガスを2030年に10年比45%削減する必要がある。

 あと7年しかない。極めて厳しい状況の中、再生可能エネルギーの拡大や化石燃料使用の大幅削減で具体的な合意ができるかが焦点だ。

 パリ協定では、各国が掲げる目標に法的拘束力はない。任せきりにならないよう、5年に1度、各国の対策を点検する。COP28はその最初の機会になる。

 世界の科学者でつくる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、各国の現在の削減目標では今世紀末までに地球の平均気温は2.1~2.8度上昇すると予想し、「この10年の対策が数千年先に影響する」と警告した。

 現在の対策だけでは不十分と言う認識を共有し、先進国を中心に目標の上積みを促す必要がある。

 昨年のCOP27で80カ国以上が賛成したものの、日米などの反対で合意できなかった「化石燃料の段階的廃止」が再び議論になるとみられる。

 一方で、欧米やUAEなどの「有志国」が世界全体の再エネの設備容量を30年までに3倍にすることを誓約する。化石燃料からの撤退と、途上国への支援も併せて明確にし、地球規模での脱炭素の道を確実にしてもらいたい。

 日本も有志国に参加する方向だが、先進7カ国(G7)では唯一、石炭火力発電の継続にこだわり続けている。国際協力に背を向けていると、再エネの潮流から取り残されるばかりだろう。

 中東やウクライナでの武力衝突によって気候変動対策は国際問題の後景に退くことが懸念されている。

 だが、むしろ再エネの推進や、そのための分散・自立型エネルギー源への転換は、安全保障や防災の観点からも重要なのは明らかでではないか。

 議長を務めるUAE産業・先端技術相は国営石油企業の最高経営責任者を兼務する。利益相反に陥らず、脱化石燃料時代に向けた強いメッセージの取りまとめで手腕を発揮してもらいたい。
 

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