上野樹里「隣人、自分自身に向き合えているか」 映画「隣人X 疑惑の彼女」で林遣都と共演

「隣人X 疑惑の彼女」に出演した上野樹里(左)と林遣都=大阪市内(撮影・笠原次郎)

 ほかの惑星から来た難民「X」が、人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだ世界。Xは決して人間を傷つけない本能を持っているとされるが、人々は誰がXなのか疑心暗鬼になりながら生きている。映画「隣人X 疑惑の彼女」で、Xの疑いをかけられる良子を演じた上野樹里(兵庫県加古川市出身)は「偏見というフィルターが自分にもついている怖さに気づかされる」と話す。

 良子は、林遣都が演じる週刊誌記者憲太郎の取材ターゲットになった後、憲太郎と相思相愛の関係になる。しかし憲太郎は記者として成果を出すことを強いられ、良子や周囲の人々の心に深い傷を負わせる。林は「精神的に人を傷つけるのは、肉体的に傷つけるよりも、よっぽど疲弊すると知った」と話す。

 監督は、上野にとって「虹の女神 Rainbow Song」(2006年)以来となる熊沢尚人。上野は脚本を受け取った数日後、熊沢と8時間にわたる打ち合わせを行い、綿密なやりとりを重ねた。「人としての体温を発しつつ、Xのようにも見える良子さんであるためには、本番までに何度も話し合うしかなかった」と、作品にのめりこんだ理由を話す。

 一方の林が熊沢とタッグを組むのは「ダイブ!!」(08年)以来だ。林は本番撮影中に「千本ノックのような撮り直しがあった」と振り返り「足りない部分を見抜き、伝えてくれる以前(の熊沢監督)と変わらず、うれしかった」と語る。

 作品は「誰がXか」という謎解きだけでなく、ラブストーリーや過熱報道による被害などにも焦点を当てた。「私たちは隣にいる人の心に向かい合えているのか。さらに言えば、私たちは自分自身の心に向き合って生きているのか-を問いかける映画になった」と上野。「マイノリティーといわれる人に対しても、手を取り合い、心を見つめることができるような生き方ができればいいな」とほほ笑んだ。

 キノシネマ神戸国際などで公開中。(井原尚基)

© 株式会社神戸新聞社