16年ぶり昇格懸かる清水との大一番へ…東京Vの奈良輪雄太、深澤大輝がそれぞれの決意語る

大一番へ決意語る奈良輪雄太(左)、深澤大輝(右)[写真:©超ワールドサッカー]

東京ヴェルディは2日、2023J1昇格プレーオフ決勝で16年ぶりのJ1復帰を目指す。この大一番に向けて2選手が昇格への強い想いを語った。

今シーズンの明治安田生命J2リーグを2位のジュビロ磐田と同じ勝ち点75で終えたものの、得失点差で涙を呑んで3位フィニッシュとなった東京V。これにより、2018シーズン以来の参戦となったプレーオフ準決勝では6位のジェフユナイテッド千葉を2-1で下し、16年ぶりのJ1昇格へ王手をかけた。

そして、12月2日に国立競技場で行われる運命の決勝ではレギュラーシーズン4位で、プレーオフ準決勝でモンテディオ山形を退けた清水エスパルスとの対戦が決定した。

2018シーズンに湘南ベルマーレから加入したMF奈良輪雄太は、ここまで在籍6年と古参プレーヤーの一人。近年は度重なる負傷に悩まされ、今季はレギュラーシーズンの出場は17試合にとどまったが、勝負所を見極めた安定した守備と献身性によって準決勝の千葉戦を含め終盤のクローザー役としてさすがの仕事を見せている。

さらに、日々の生活、トレーニングで示す徹底的なプロフェッショナリズムは、若手が多いチームにおいて見習うべきロールモデルの一人として貴重な存在だ。

「当たり前のことを当たり前にやる」という最も難しいことにフォーカスしてきた36歳の職人は、これまでの在籍期間を通じて良いときも悪いときも、常にチーム内における緩みについて口酸っぱく言及してきた。

それでも、城福浩監督の就任後、とりわけ昨季終盤以降はチーム全体のポジティブな意識の変化を口に。その言葉通り、今季のチームは不用意な失点や勝負弱さといったこれまでの悪癖を払しょくし、タフなチームに進化している。

「日ごろの練習がすべて試合に出るとずっと思ってやってきましたし、今までは練習、特にセットプレーとかではぬるいシーンがずっと多かったですが、そこが今年はかなり改善されて実際に失点がリーグで一番少ないという数字も出せました。練習でやっていることが改めて数字に表れるということを実感しました。若い選手は多いですが、彼らもしっかりとやることをやっていると思うので、自信を持って試合に臨めると思います」

また、「個の能力を数値化すれば、間違いなく向こうの方が上」と率直に語るJ2屈指のタレント軍団との大一番のポイントについては、やはり「自分たちがやるべきことをやる」と予想通りの答えが返ってきた。

「個の能力を数値化すれば、間違いなく向こうの方が上であることは明白。そのなかで個人に頼っていた序盤戦から秋葉さんに代わってから強度や規律がかなり徹底されてきていると思いますし、本当に強いチームだと思っています」

「ただ、最後の最後は相手ではなく自分たち次第だと思っているので、とにかく自分たちがやるべきことをやる。今までやってきたことを基本に忠実に徹底し、それが結果につながることを信じてプレーする。それに尽きると思います」

「自分が出る形は勝っている状況だと思うので、そこでクローズすることができれば最高の結果になります。自分が出る可能性が高いのはそういう状況なので、自分が出る展開になることを信じて出た際にはやるべきことを徹底していきたい」

奈良輪個人としては加入1年目となった2018シーズンにJ1参入プレーオフの3試合を経験し、ジュビロ磐田との決定戦では涙を呑んだ。

その悲劇から5年ぶりに巡ってきた大一番は、奇しくも横浜F・マリノスでのプロ1年目で初めてプレーし、2014年元日に天皇杯優勝を果たした国立での開催となる。奈良輪はそういった不思議な巡り合わせを感じつつ、このチャンスを必ず掴みたいと昇格への強い想いを示す。

「湘南でJ1に昇格しながら、J2のこのクラブに来ました。それは数年後に自分がJ1でプレーする確率がどこが高いということを考えたときに、それがヴェルディだという判断のもとでここに来ました。J1でプレーするという部分で年齢や年数を重ねるごとに薄れてきていた部分は正直なところありますが、本当に最後の最後にこういうチャンスが巡ってきているので、このチャンスをしっかりと掴みたいと思います」

「新しい国立になってから自分はプレーしたことがないですが、プロ1年目で初めて国立のピッチに立ったのが、天皇杯の決勝でした。そこで優勝することができました。そこから10年以上経っていますが、サッカーの神様がいるとかは思っていませんが、そういう巡り合わせというか、そういうツキというものに恵まれてきた人生だったと思うので、そういう縁があるのかなとも少し感じています」

一方、東京Vの下部組織出身のDF深澤大輝は、中央大学を経て2021年から古巣でプロキャリアをスタート。今季は負傷による離脱でリーグ戦27試合の出場にとどまったが、持ち味の攻撃参加を武器に左サイドバックながらチーム上位の4ゴールを記録した。

準決勝の千葉戦でも先発出場し、今回の決勝でも出場が見込まれる深澤は、今季2敗した清水の印象とともに試合のポイントについて言及。リーグ上位のアドバンテージで引き分けでも昇格を決められるが、J1に行く資格を示すためにあくまで勝利を目指す。

「今シーズンここまで戦ってきたなかで一番質が高い選手が揃っていると感じたのが清水でしたし、自分たちは2敗しています。個人的にはホームでの前回対戦で負傷交代しているので、いろいろと思い入れがあるというか勝たなければいけない試合だと思っています。相手のミドルシュートはチームとして警戒していますし、(プレーオフ準決勝の)山形戦でも乾選手が前半に打ったシュートは強烈でしたし、チアゴ・サンタナ選手もいるのでまずは打たせない、自分たちはリーグ最少失点という自信につながる部分もあるので、全員で身体を張ってまずは先に失点しないことを意識したい」

「(マッチアップが予想される)中山(克広)選手は対面したときにすごく速いと感じた選手ですし、背後を狙ってくるというか、スピードを活かすための技術に長けた選手というイメージ。動き出しや止まるところ、そこからの加速という部分で90分間集中してやらないとやられてしまうと考えています。そこはセンターバックのカバーリング、ボールホルダーに良いボールを背後へ蹴らせないところも含め、自分一人で守備をするというよりも対面する相手に仕事をさせないためにチームとしてどうするのか、そこを近くにいる選手と話しながらやっていく必要があります」

「僕らは結構上位陣に勝てていないというのを感じていますし、清水に対する2敗という部分も意識しています。昇格した町田やジュビロにも勝っていないですし、清水に必ず勝って行くということは自分たちとして大事なところですし、J1に行く資格があるかを試される試合になると思います。個人的にもマッチアップする中山選手といった相手の選手とどれだけの差があり、自分がJ1で通用するかの試金石にもなると考えています。チームで勝ってJ1に行きたい」

「僕らは今年1年積み重ねてきたものを90分間で出すだけだと思っています。それは監督がジェフ戦でも言っていましたが、1年間積み上げてきたものを出す。それを出せれば勝てる自信があるので、そこにフォーカスしてこの1年間に個人としてチームとしてやってきたことを出すための準備をしたいです」

また、この決勝に向けては前身の読売クラブ時代を含め、日本サッカー界の黎明期を支えたJリーグ初代王者の復活を期待する声も挙がる。深澤はそういったクラブOBやファン・サポーターの想いを「背負いすぎる必要はない」としながらも、自分たちの世代での名門復活への強い決意を語っている。

「いろんな人がヴェルディのことを気にしていますし、J1に上がってほしいというそういう方々の気持ちを背負いながら戦います。そういう選手が叶えられなかった夢でもあるので、背負いすぎる必要はないですが、みんなでやることをやるだけだと思っています」

「僕がジュニアに入ったときはJ2で、Jリーグの黎明期にヴェルディが強かったということを聞いていますが、僕自身は強かったときのヴェルディは知らない身でもあります。それを自分たちが強かったときのヴェルディに戻せると思うと本当にワクワクしますし、いろんな人がヴェルディは強いチームであってほしいと言ってくれていることは嬉しいですし、そういうチームでなくてはいけないと自分自身思っています」

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