「剣道日本一」の23歳 防具を脱げば“新人警察官”「道場が嫌で泣いていた少年」が全日本選手権優勝 棗田龍介選手の強さに迫る

11月に開かれた剣道全日本選手権で「剣道日本一」となったのが棗田龍介(なつめだ・りゅうすけ)選手です。優勝した棗田選手は広島県警の新人警察官でもあります。

「剣士」と「警察官」、2つの顔を持つ棗田巡査の “強さの秘訣”に迫ります。

9月に警察学校を卒業 「1日1日が勉強することばかり」

鑑識実習

ドラマや映画でよく見るこの光景・・・事件現場で重要な痕跡となる指紋や足跡を採取する「鑑識」です。

9月に広島県警察学校を卒業したばかりの棗田龍介巡査、23歳です。現在、海田警察署で勤務していて、日々、研修を続けています。

棗田龍介 巡査
「難しいし、本当に慎重というか、丁寧にずっとやっている。現場に実際に行ってやるとなると、まだまだできないかなと思います」

そんな棗田さんには、もう一つの顔があります。
それが「日本一の剣士」です。

11月3日に行われた剣道日本一を決める大会「全日本剣道選手権」で、全国47都道府県の強豪たちに打ち勝ち、見事、優勝を果たしました。広島県代表としては初めての快挙です。

棗田龍介 巡査
「実感もあまりなくて、当日も今も本当に優勝したのかなという感じなんですけど、大会までにいろいろな方に支えてもらったので、嬉しい気持ちと感謝というかありがとうございますという気持ち」

棗田さんは、警察官としての研修と稽古を両立して行っています。

「目や声」から伝わる気迫ー。道場は緊迫感に包まれていました。

棗田龍介 巡査
「1日1日が勉強することばかりで充実しています。」

最初は本当に嫌で…「道場の外で泣きわめいていた」小学校時代

棗田さんは父や姉の影響で、小学校低学年のときに剣道を始めました。これまで15年以上にわたって、続けてきましたが…

棗田龍介 巡査
「初めの頃はもう本当に嫌いだったんですけど、なんかもう気づいたらやってるみたいな感じ」

棗田さんが小・中学生のときに通っていた剣道教室「亀山剣道クラブ」で、棗田さんを指導していた増西伸治さんはー。

小・中学校時代の指導者 増西伸治さん
「忘れもしないですけど、最初は道場の外で泣きわめいて『もう嫌だ嫌だ、もう道場入りたくない』っていうような子でした」
(Q.全日本選手権で優勝してどうですか?)
「子どもの頃から一緒にやってきたものが、よみがえってきて、一回戦からずっとかじりついて見ていたんですけど、本当に感無量という感じでした。最後は、本当によくとってくれたなっていう感じですね」

そんな棗田さんの「強さの秘訣」を探りました。

「試合で勝つために練習する」 剣道への意識が変わった瞬間

棗田龍介 巡査
「意識が変わったのは、中学生とか小学校高学年中学生にかけて、『試合で勝つために練習する』という意識で練習するようになったと思います」

「嫌だった練習」から「試合で勝つための練習」へ。増西さんも、棗田さんの“変化”を見てきました。

小・中学校時代の指導者 増西伸治さん
「彼が中学校1年生のとき、広島で一番を決める大会があるんですけど、1年生ながら中学校のメンバーに選ばれて、そこで見事に優勝したっていうのが一番の思い出ですかね」

増西さんは「棗田さんの強さ」をこう話します。

小・中学校時代の指導者 増西伸治さん
「今回の全日本の戦いぶりもそうですけど、どんな相手でもどんな状況でも、心臓が強いとよく表現されますけど、物怖じせずにどんなことでもどんな相手でもぶつかっていけるっていうのが、彼の1番いいところじゃないかなと思ってますね」

棗田龍介 巡査
「私の場合は、基本的に全部打てるというか、平均的に全部の技を出せるようにして、相手に対応できるようにする。なので、得意技は全部というか、ある程度打てるのかな」

棗田さんはクラブに優勝報告をしに来たといいます。
クラブの後輩たちは棗田先輩をどう思っているのでしょうか。

亀山剣道クラブ 中学3年生 齊藤羽琉亜さん
「かっこよくて、本当にわかりやすい指導をしてもらえる本当に心優しい先輩です。僕たちも先輩のような人になれるように頑張りたいと思います」増西伸治さん
「今まで通り、道場訓でもある「一意専心」という気持ちで、常に挑む気持ちで、さらなる高みを目指してもらいたい」

棗田龍介 巡査
「まずは、来年7月の世界大会に出られるように、合宿がこれから増えていくので、そこでいい結果を残して世界大会に出るということと、全日本選手権も11月3日に出るのはもう決まっているので、その大会でもまたいい結果が残せるように頑張りたい」

これからも「警察官」、そして「剣士」として挑戦を続けます。

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