【MLB】 大谷の移籍先候補・ブルージェイズ 獲得の可能性を検証

写真:ロジャース・センターで本塁打を放つ大谷翔平©Getty Images

以前から、大谷翔平の争奪戦の”大穴”と言われてきたブルージェイズ。現地1日の『ESPN』ジェフ・パッサンが更新した記事によれば、ブルージェイズはまだこの獲得レースにとどまっているという。

この記事では、ブルージェイズのニーズ、財政状況、環境といった点から、大谷獲得に至る可能性を検証していく。

【強打者を求めるブルージェイズのニーズはまさに大谷に合致】

2021年に大谷とMVPを争ったブラディミール・ゲレーロ・ジュニア、遊撃手ボー・ビシェットという華々しい二世スターコンビを筆頭に、ブルージェイズの強力打線はチーム最大の売りのはずだった。しかし、2023シーズンはその打線が低調。チームOPSはメジャー11位、本塁打数は16位に低迷し、ワイルドカードシリーズでは1得点しか奪えず敗退した。

今オフはその打線から、さらにウィット・メリフィールド、マット・チャップマン、ブランドン・ベルトらベテラン勢がFAに。DHのポジションも空いており、大谷のような強打者はまさにブルージェイズの問題を解決できる存在だ。

さらにゲレーロ、ビシェットをはじめ、主力打者は右打者ばかりという点も、大谷がフィットする要素となる。ブルージェイズは大谷の他にもコディ・ベリンジャーやジェイマー・キャンデラリオにも興味を示しているとされており、”左の強打者”を求める姿勢は本物のようだ。

大谷争奪戦に加わっているドジャースなどの他球団は、実はオフの補強ポイントは先発投手である。それらの球団は、大谷が2025年以降の投手復帰を予想される中、ニーズからはやや外れた選手に大きな出費をすることになる。その点、ブルージェイズは先発ローテが安定しており、今の打者専念の大谷に対するニーズが最も強い球団と言うこともできる。

【財政状況はオーナーからの手厚いサポートもあって青信号?】

ブルージェイズは勝負モードの際には、総年俸(ペイロール)はメジャー10位前後まで拡張できるだけの資金力がある。しかし、その資金力を持ってしても、ブルージェイズのペイロールはそこまでの余裕を持たない。

2023シーズンの開幕ロスターはおよそ2億993万ドル、さらにオフが始まった現時点でもブルージェイズの来季ロスターはおよそ1億9292万ドルと試算されている(『Cot’s Baseball Contract』より)。

マーク・シャパイロCEOは、2024シーズンも同程度のペイロールを想定していると示唆したが、5億ドルはくだらない大谷と契約すれば、この範囲は間違いなくオーバーする。大谷争奪戦にまだ加わっていることは、ブルージェイズが多大な出血を織り込み済みということを意味するだろう。

ロス・アトキンスGMは「我々はこのチームを良くするために、常にオーナーからの信じられないサポートを得ていた」「我々は機敏に動ける数少ない市場のひとつだと思う」(『スポーツ・ネット』)と、財政状況は青信号であることを示唆している。

また、ビシェットとゲレーロとの契約延長交渉が今のところは不発に終わっている点も、大谷への巨額の投資を後押しするかもしれない。生え抜きのスターとの巨額の契約延長がかなわないならば、その分を大谷に回すことができる。逆に大谷がいるということが2人との契約延長交渉におけるアピールポイントになるかもしれない。

【ブルージェイズの充実した環境は大谷へのアピールポイントに】

そもそもメジャーの中では唯一カナダに本拠を置き、通貨が異なるといった点から、ブルージェイズはこれまでFAの選手に人気の球団とは言い難かった。しかし、最近ではジョージ・スプリンガーやケビン・ゴーズマンといった大物FAを競り落とし、トレードで獲得したホセ・ベリオスとの契約延長にも立て続けに成功した。ブルージェイズが不人気な移籍先という見方はもはや薄れつつある。

ブルージェイズのアピールポイントは、カナダという国単位の熱心なファンベース、本拠地ロジャース・センターとフロリダ州ダニーデンの選手育成・キャンプ施設が改修によって”球界一”レベルに充実しているという点、そしてオーナーサイドが勝利にコミットメントしているという点にある。

大谷が金額以上に環境や勝利を重視する可能性は以前から指摘されており、その点ブルージェイズは全てのチェックボックスをクリアしている球団と言える。

また、トロントは日本人の人口が増えている多様性に富んだ都市だ。これは大谷にとっても魅力的な点かもしれないし、ブルージェイズにとってはますます大谷を魅力的なターゲットにする点だろう。

そして、ブルージェイズの親会社ロジャーズ・コミュニケーションズはカナダを代表するメディア企業だ。もし獲得に成功すれば、カナダ全土に張り巡らされるだろう大谷の広告キャンペーンによる恩恵は大きく、それも踏まえて多少の奮発を容認する可能性はある。

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