「色んな人の苦労によって僕らは喜びを味わえた」、東京V生え抜きの谷口栄斗は苦難の15年で奮闘した偉大なる先達に感謝

東京Vの昇格に貢献した若きDFリーダーの谷口栄斗[写真:©超ワールドサッカー]

東京ヴェルディのDF谷口栄斗が、16年ぶりの悲願達成の喜びを語った。

東京Vは2日、国立競技場で行われた清水との2023J1昇格プレーオフ決勝を制し、16年ぶりのJ1昇格を決めた。

今シーズンの明治安田生命J2リーグを3位フィニッシュした東京Vは、昇格プレーオフでジェフユナイテッド千葉を2-1で破り、ジュビロ磐田に敗れた2018シーズンのJ1参入プレーオフ決定戦以来の決勝へ駒を進めた。

5万3264人の観客を集めたレギュラーシーズン4位の清水とのオリジナル10対決では、ゴールレスで折り返した後半序盤にMF森田晃樹のハンドで与えたPKをFWチアゴ・サンタナに決められて先制を許す。しかし、8分が加えられた後半アディショナルタイムの96分にFW染野唯月がDF高橋祐治に倒されて得たPKを自ら決め切り、土壇場で同点に追いつく。そして、このまま1-1で試合をクローズした東京Vはリーグ上位のアドバンテージによって悲願のJ1復帰を成し遂げた。

2敗したレギュラーシーズンの対戦を負傷で欠場していた谷口は、今季3度目の清水との対戦で初出場。チームとしてはPKで1失点を喫したものの、相手のキーマンであるチアゴ・サンタナに安定した対応を見せるなど、1-1のドローに大きな貢献を見せた。

その激闘を振り返った谷口は、「勝ってしっかり決めたかった」と正直な気持ちを明かしながらも、持ち味の堅守と粘り強さで勝ち取った昇格を誇る。

「勝ってしっかり決めたかったというのが正直な気持ちです。ただ、昇格を掴むには引き分け以上という条件だったので、そこはもう良かったなと思います」

「J1に行くのであれば、ああいったタレントの選手と対峙しなければいけないというのは当たり前のことなので、今日はそこを意識して臨みました。乾選手が自由に動くぶん、自分たちの味方が絞ったときにサイドが空いてしまうことは仕方ない部分がありました。ただ、クロスの対応は1年間積み上げてきた部分だったので、そこはしっかりと対応できました」

「(失点後は)自分たちがよりボールを持つ展開となり、自分たちがやりたいというか特徴が出る展開になっていたので、しっかりとボールをつなぐことだったり、取られた後の切り替えは今年1年間積み上げてきたので、それが出たと思います。1失点した後に相手がやり方を変えてきたので、そこまでピンチというピンチはなく自分たちの失い方の問題でピンチになる場面もありましたが、そこはリスク管理もしていましたし、相手がそこまで寄ってこないという部分もあってそういう展開になりました」

また、ジュニア時代から東京Vの下部組織に在籍し、国士舘大学を経て古巣に帰還した緑のDNAを色濃く受け継ぐ若きディフェンスリーダーは、16年ぶりの昇格に言及。経営難によるクラブ消滅の危機、15年間のJ2での苦しい戦いのなかで懸命に戦い続けた偉大な先達、そういった苦境のなかでもクラブを支え続けた“12人目の選手”への感謝の想いを語っている。

「まだ実感はないですが、言葉で表すことができないぐらいのものを手にできたと思っています」

「僕たちはタイミングよく昇格の場に立てただけで、この15年にはいろんな歴史があって僕がジュニア時代には経営危機でクラブ存続できるかできないかの瀬戸際でしたし、その経営危機以外ではJ2で15年戦ってきた選手や監督、スタッフ。いろんな人の苦労があったからこそ今日僕たちがこのタイミングで昇格を掴み取れたので、そういう人たちに対する敬意を示さなければいけないですし、そういう人たちの苦労があったからこそこういう大きな喜びを味わうことができたと思います」

「(5万人を超える観客に)ちょっと感慨深いものがありますし、少し言葉で言い表すのは難しいですが、自分たちが1年間やってきたことが、そういったところに表れたことは良かったと思います。入場のときは素晴らしい雰囲気を作ってくれたので、そこは感謝していますし、素晴らしいサポーターとともに歴史を動かせて良かったです」

さらに、今季は副キャプテンとして支えた1歳下のキャプテンへの気遣いも忘れない。

「彼のハンドでPKを与えてしまってサッカーの神様は本当に残酷なことをするんだなと試合中に少し思っていました。ただ、追いついたことで(森田)晃樹もすごく安心したと思いますし、晃樹がキャプテンでJ1昇格を成し遂げることができて本当によかった。自分が言うのもなんですが、本当にたくましくなったと思います」

今回のJ1昇格によって名門復活の足掛かりを掴んだ東京Vだが、谷口は「昇格を達成できましたが、本当の勝負はこれからだと思います。クラブとしてもう一度気を引き締めていきたいです」と、来季J1での厳しい戦いに向けての決意を示した。

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