2018年PO敗退の悔しさ知る梶川諒太が16年ぶりJ1昇格に歓喜、「長い間応援し続けてくれた想いにみんなで応えられた」

チームメイトと共に昇格を喜ぶ梶川諒太[写真:©超ワールドサッカー]

2018年プレーオフ敗退の悔しさを知る東京ヴェルディのMF梶川諒太が、16年ぶりのJ1昇格への想いを語った。

東京Vは2日、国立競技場で行われた清水との2023J1昇格プレーオフ決勝を制し、16年ぶりのJ1昇格を決めた。

今シーズンの明治安田生命J2リーグを3位フィニッシュした東京Vは、昇格プレーオフでジェフユナイテッド千葉を2-1で破り、ジュビロ磐田に敗れた2018シーズンのJ1参入プレーオフ決定戦以来の決勝へ駒を進めた。

5万3264人の観客を集めたレギュラーシーズン4位の清水とのオリジナル10対決では、ゴールレスで折り返した後半序盤にMF森田晃樹のハンドで与えたPKをFWチアゴ・サンタナに決められて先制を許す。しかし、8分が加えられた後半アディショナルタイムの96分にFW染野唯月がDF高橋祐治に倒されて得たPKを自ら決め切り、土壇場で同点に追いつく。そして、このまま1-1で試合をクローズした東京Vはリーグ上位のアドバンテージによって悲願のJ1復帰を成し遂げた。

下部組織出身ではないものの、関西学院大学から東京Vでプロデビューを飾り通算3度在籍する梶川は、森田ら生え抜きの選手にも劣らない緑の血が色濃く流れる選手の一人。

奇しくも、今年4月に行われた今回の対戦相手である清水戦で右ヒザ前十字じん帯損傷の重傷を負った34歳MFは、驚異的な回復力で10月末のジュビロ磐田戦で戦列復帰。ただ、以降はチームの主力の復帰などもありベンチ外が続き、今回の試合もスタンドからチームメイトの戦いを見守ることになった。

そのため、多くのホームサポーターと同様に痺れる展開での劇的昇格に気が気ではなかったという。

「こんなハラハラさせないでくれと思いましたけど、ここまでの選手の頑張りも見てきましたし、それは試合に出ている選手だけでなくメンバー外やサブのメンバーが相手想定になって自分たちのやりたいことを押し殺しながら本当に全力でやってくれていたので、そういう選手たちも含めて報われてほしいと思っていました」

「そこは自分たちがこれまでやってきたことなので、別にご褒美とは思わないですが、最後ああいうふうにチャンスが転がってきたのはかなり厳しい状況でしたが、全員が最後まで切らさずにやってきたことも最後力になったのかなと思います」

「1点取れれば大丈夫というところでしたが、あのプレー(PK献上)によって(森田)晃樹が動揺せずにいてほしいと思っていました。最初はちょっとあれって感じもありましたが、あいつらしく試合のなかで立ち直っていくという部分で心配はなかったです。あとはみんなが最後までやり続けた結果でした。ただ、最後までハラハラしましたし、そこまでドラマチックにしなくていいよという感じでした(笑)」

また、新キャプテンに任命されたなか、開幕前に「ヴェルディをJ1に上げた男になる」と宣言し、見事にその公約を果たした森田については、シーズン序盤はリーダーとしての役割に物足りなさを感じたことを認めながらも、1年での成長ぶりに目を細めた。

「本当にめちゃくちゃ変わったと思いますし、キャプテンをするようなキャラではなかったので、最初に一緒に出ていたときはまだまだ大丈夫かなと思った部分も正直ありました。ただ、チームを背負っていくなかでだんだん顔つきが変わっていく様子を感じましたし、たくましくなってくれたし、本当に嬉しい気持ちです」

チームのムードメーカーであり、関西人らしい茶目っ気を見せてチームメイトの奮闘を振り返った梶川だが、やはり愛するクラブの16年ぶりの悲願達成をピッチ上で味わいたかったとの正直な気持ちを認めている。

「もちろんそれは僕だけでなく全員がそうだと思います。ただ、僕は人一倍ヴェルディへの想いが強いと思っていますし、大卒ですがヴェルディというチームが好きだということを改めてこの1年感じました。最後にピッチでその瞬間を感じたかったですが、みんなの喜ぶ姿や試合後に喜びを分かち合ったことで十分に感じることができました」

「言葉にならないですし、これまで2度昇格を経験してその時も嬉しかったですが、やっぱりヴェルディでこの瞬間をこのスタジアムで一緒に経験できたことは言葉に表せないです」

2018年のプレーオフ敗退を経験した数少ない選手の一人として今回の昇格の重み、とりわけ15年ぶんの悔しさを胸にこの日の歓喜を迎えたサポーターに対する強い想いを言葉にした。

「あの時は6位から這い上がりましたが、やっぱり難しい状況でした。ここまでクラブ消滅の危機を乗り越えたり、あの時のまたJ1に上がれないのかという瞬間があり、サポーターの人たちはチームを移ることがないので、選手はどうしても移り変わりがありますが、より苦しい経験や苦い経験をたくさんしてきて16年ぶりの昇格ということを考えると、とてつもない長い期間どんなときも応援し続けてくれたので、その想いにみんなで応えることができて本当に良かったと思います」

さらに、多くのファン・サポーターと同様にここまでの厳しい日々を支えたクラブOBへの敬意。そして、ここ数年のクラブを巡る大きな変化のなかで読売クラブ時代から連綿と受け継がれる、名門クラブの伝統の重みの重要性を説く。

「今日も試合前に飯尾(一慶)さんから連絡をもらいました。応援するよと言ってくれましたし、本当にこれまで積み上げてきてくれた偉大な人たちがいたからこそ、今もこうやってヴェルディが続いているので、もちろん新しいヴェルディを作っていくことも大事ですが、そんな軽いチームではないので、ヴェルディの重さを感じながら強いチームになっていければいいのかなと思います」

その一方で、チームのピッチ上での躍進と共に様々なプロモーションでシーズン終盤の観客動員増加に寄与したフロントスタッフらの尽力に言及。「本当に強く良いチームになった」とクラブのピッチ内外での成長を実感している。

「もちろん相手の清水さんのサポーターもたくさん来ていましたが、これだけ多くのサポーターが来てくれたことは、選手とかだけでなくフロントスタッフの方々がすごく声掛けしながらこの雰囲気を作ってくれたので、本当にクラブ全員でこのクラブを作り上げていると感じます。本当に強く良いチームになったと感じています」

最後に、自身も本格的にコンディションを戻して臨む来季に向けては「監督や選手も言っていますが、これがスタートになります。ここですぐに落ちてしまっては意味がないので、この瞬間は喜ぶべきですが、また来季このチームがJ1で戦い続けられるようなチーム作りをしていく必要があります。僕自身もここからはまたしっかりとヴェルディのためにやりたいと思います」と、気を引き締めつつJ1の舞台での躍進を誓った。

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