商店街の空き店舗に「勝機」 若きオーナーたち始動 長崎市新制度活用

ベルンのオーナーシェフの藤田さん。店内には焼きたての菓子の甘い香りが漂う=長崎市大浦町

 新型コロナ禍を経て、長崎市内の商店街は空き店舗が目立ち始めた。町のにぎわいを呼び戻そうと、市は本年度、空き店舗への出店を支援する制度を新設。これを活用し、早速動き出した若きオーナーたちを追った。
 10月10日、異国情緒あふれる大浦町にオープンしたのは洋菓子販売の「お菓子工房ベルン」。シュークリームやカステラなどが並び、店内は甘い香りに包まれている。べっ甲工芸店跡に開店して約2カ月、1日平均約50人が来店。売り上げも順調に伸びている。
 「医療関係者や学生が多いエリア。勝機はある」。こう語るのはオーナーシェフの藤田剛さん(40)。高校卒業後、市内や福岡市の洋菓子店に勤務。今年5月の新型コロナ5類移行後、独立を決意し、長崎市の空き店舗活用にぎわい創出事業費補助金を知り、迷わず申請した。
 同補助金は本年度、2500万円を予算化。出店者が開店場所を見つけ、出店費用として最大200万円を補助する。7月10日から10月末までに13店舗と1商店街が応募し、すでに本年度分の予算枠に達した。
 市中心部の21商店街の現況調査によると、計約2300店舗の空き店舗率は2019年が11.5%だったが、22年は13.5%に上昇。中心部の浜市商店連合会に絞ると、空き店舗率は全体の2割近くを占める。
 市商工振興課は「空き店舗対策に着手していた他都市に比べ、長崎市は人の流れが平地に集中し、商店街もにぎわいを維持していたが、コロナ禍以降、空き店舗が目立つようになった」と分析。今後について「(空き店舗を活用した店舗が)商店街に寄与するかどうかの正念場。来年度以降も(同補助金が)継続できるよう、店舗と商店街を一緒に盛り上げていく」と“伴走支援”を続ける考えだ。
 10月28日、東古川町の中通り商店街に誕生したのは「Ms’ Market」。元は飲食店だったが、ジェンダーレスな服や雑貨を扱うコーナーとカフェに様変わり。店舗のガラスを外して開放感あふれるリノベーションが目を引く。
 オーナーの伊藤弘喜さん(33)は市内で約10年間、理学療法士として勤務。開店を決意したのは、身体のリハビリは病院だけでなく、「町に出かけるきっかけが必要」と感じたから。「この店を入り口に“高齢化”する商店街に足を運ぶきっかけになりたい」。空き店舗とともに町へ新しい風を吹かせていく。

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