近年頻発の陸奥湾マイワシ大量漂着 資源回復、水温急変など3つの要因か

海岸に大量に漂着したイワシ=2023年2月16日、横浜町

 近年頻発している陸奥湾東湾の海岸への大量のマイワシ漂着に関し、県産業技術センター水産総合研究所(青森県平内町)の野呂恭成・総括主幹研究専門員(64)が、マイワシの資源回復や漁獲する定置網漁業の減少、水温による冬期間の湾内での生息状況が影響している-との考察を発表した。1日付の同研究所と内水面研究所の広報紙「県水産研究情報 水と漁(いさり)」に掲載した。

 イワシの大量漂着は近年では2018年と22、23年に横浜町などで発生。野呂氏は18年に「一時的な気温低下に連動した急激な水温低下によって逃げ遅れ、仮死状態で浮き上がり、西風によって陸奥湾東湾に打ち上げられた」との考察を発表している。

 野呂氏によると、かつて漂着が確認された1987年を含めた4年分の陸奥湾東湾の風向風速を解析した結果、漂着時には西風が吹いており、マイワシが吹き寄せられたという。

 また、陸奥湾のマイワシの漁獲量を調べたところ、70~80年代に多く、ピークの81年には1万4675トンだったが、2008年には31トンに減少。マイワシが取れなくなり、ホタテ養殖業が安定したこともあって、青森市の漁業者によるイワシの定置網漁が減った。近年は外ケ浜町を中心に漁獲量が多く、資源が回復しているという。今年3月の同研究所の調査でも魚群探知機で多くのマイワシとみられる反応が確認された。

 近年の1~2月の漁獲量に関しては、18、20、22、23年が多かった。海岸に大量漂着した18、22、23年の1月の水温は平年並みだったのに対し、漂着がなかった20年は極端な暖冬。平年並みの年に急激な水温低下が発生し、逃げ遅れや仮死状態が発生したとみられるという。21年は極端な寒冬で湾内から暖かい外海にイワシが逃げていたため、漁獲量も少なかった。

 野呂氏は東奥日報の取材に「平年並みの水温の時にイワシの大量漂着が起こりうることなど、メカニズムが明らかになってきた」とした上で「漂着による片付けの手間や経費を減らすために、今回の研究が役立ってほしいし、イワシを漁獲することも検討が必要だと感じた」と語った。

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