青森県内の性犯罪認知、大幅増 刑法改正、社会問題化背景か 10月末で75件

 青森県内で今年、性犯罪の認知件数が増加している。県警捜査1課によると、10月末までの性犯罪の認知件数は75件(前年同期比33件増)で、既に昨年1年間の52件を大きく上回っている。7月の刑法改正で、性犯罪規定が大幅に見直されたほか、陸上自衛隊内で性暴力を受けたことを実名で訴えた元自衛官五ノ井里奈さんの活動、旧ジャニーズ事務所の性加害問題などを受け、性犯罪を社会問題として考える機運の高まりが背景にあるとみられる。

 同課によると、10月末までに県警が認知した性犯罪75件の内訳は、不同意性交が25件(同11件増)、不同意わいせつが50件(同22件増)。刑法改正により、曖昧だった犯罪の構成要件が明文化されたことや、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられたこと、これまで県条例で摘発していた事案に、刑法を適用できるようになったことなどが大きく影響しているという。

 年間の性犯罪認知件数は2019年が31件、20年が36件、21年が44件と、近年増加傾向となっている。同課の野里和保課長は「相談を受け付ける体制の整備が進んだことが要因の一つとして考えられる」と話す。

 性犯罪は「恥ずかしくて打ち明けられない」「仕返しされるのが怖い」といった理由で、被害が潜在化しやすい特徴がある。警察庁は17年、最寄りの都道府県警の相談窓口につながる全国共通ダイヤル「#8103」を導入したほか、県警も性犯罪被害相談電話(通称・性犯罪110番)を設置。11月に、県警が不同意わいせつ容疑で青森市の自衛官を逮捕した事案も、性犯罪110番への被害者からの申告が認知のきっかけだった。

 県の「あおもり性暴力被害者支援センター」への相談も本年度、増加している。23年度上半期(4~9月)の延べ相談件数は、前年度同期比7割増の369件に上る。

 同じ内容の相談を1と数えた場合の実数は73件(同13件増)で、主な内容は不同意性交が17件、不同意わいせつが15件などだった。

 同センターの柴田重明専務理事は「今年に入り、性暴力について、社会の関心の高まりを感じる。被害者が『私も』と声を上げやすくなっているのではないか」と分析。中には、被害から数年たってから相談を受けたケースもあるという。「長い間、一人で抱え込むと、精神的に不安定になったり、社会生活に支障を来す場合がある。一人で悩まず、まずは相談してほしい」と語った。

 同センターの性暴力被害専用相談電話「りんごの花ホットライン」は電話017-777-8349(午前9時~午後5時)。県警の「性犯罪110番」は同0120-89-7834(24時間対応)。

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