社説:マンションの再生 「二つの老い」急がれる支援

 分譲マンションの多くが、建物の老朽化と所有者の高齢化という「二つの老い」に直面している。

 全国に築40年を超えるマンションは2021年末時点で約116万戸ある。41年には、3倍超の約425万戸になるとみられている。完成と同時に購入した所有者は、すでに70歳前後の世代が中心になっている。

 「老い」の進行に伴い、管理不全に陥るマンションが増えることが懸念されている。建物は大規模修繕や建て替えが必要になる一方、居住者の死亡などで所有者不明の部屋が増加し、修繕などの賛否を問えないケースが出ているためだ。

 老朽化したマンションの再生を促そうと、国が区分所有法の見直しを始めた。改正にあたっては、所有者の主体的な意思決定を、後押しできる仕組みにすることが欠かせない。

 法制審議会の専門部会が先ごろ、マンション建て替えの決議要件を緩和する案を示した。現行法では所有者の5分の4以上の賛成が必要だが、耐震性に問題がある場合などは4分の3で可能にするとした。

 今の制度では、所在が分からない所有者は「反対」とみなされる。東日本大震災などを経てマンション耐震化の重要性は高まっている。要件の緩和で、緊急性を要する物件の建て替えが進むことが期待できよう。

 6月に法制審が示した中間試案には、条件を問わず要件を4分の3にする案もあった。これには、緊急性の低い建て替えも対象になるため、少数反対者の権利を制約するといった懸念が出された。

 高齢者には収入が年金だけという人も少なくなく、多額の費用を要する建て替えや修繕に消極的になるのはやむを得ない。安全で心地よい住環境を維持するには、決議要件の緩和にとどまらず、居住者の実情に応じた多様な支援が必要だろう。

 マンションの維持管理を巡っては、20年のマンション管理適正化推進法改正で、自治体が管理不全のマンションに助言や指導ができるようになった。京都府や滋賀県でも、京都市や大津市などが「管理計画認定制度」を設け、管理水準が高い分譲マンションを認定する取り組みを進めている。

 滋賀初となるマンションを認定した大津市は、同マンション管理組合の協力を得て、管理規約や長期修繕計画を市のホームページで公開している。多くのマンションに、将来を見通した管理計画づくりの参考にしてもらうためだ。

 築年数を経ても管理が適切な物件では、居住者の世代交代が進んでいる。一方、管理不能なマンションが増えれば、地域全体の住環境悪化につながる恐れがある。まちづくりの観点からも、自治体にはより踏み込んだ対策を検討してほしい。

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