電動化初年度の2024年STCCカレンダー発表。6月開幕のヨーテボリ市街地“デュエル”含む全6戦に

 本来ならこの2023年にも華々しく新時代の幕開けを宣言する計画が、各種EVコンポーネントの「製造遅延」により新開発BEV(バッテリーEV)車両による新年度がまさかの延期になるなど、苦渋の決断を強いられていたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権が「満を持しての」2024年カレンダーを発表。すでに参戦表明済みの4マニュファクチャラーのうち、“共通電動キット”の開発も請け負う盟主PWRレーシングも『CUPRA Born(クプラ・ボーン)』のテストを開始している。

 次世代チャンピオンシップに出場する各モデルのうち、来季よりブリンク・モータースポーツが投入する『テスラ・モデル3』が先陣を切って初公開されていた新生STCCだが、本来なら新興チーム・オートラウンジ・レーシングが走らせる『フォルクスワーゲンID.3』や、TCR時代から参画するエクシオン・レーシングの『BMW i4』を含め、すでにEVモデル各車が選手権を争っていたはずのシリーズは、世界的に不確実性が増し続けるサプライチェーンの影響を受け、この初夏にも「9月からの3戦“短期集中決戦”を開催」とする短縮プランを発表していた。

 しかしその期限にも予定された新型BEV車両が走り出せる状況にはならないことが明らかとなり、猛暑の8月にはその導入を再度「2024年に延期する」とアナウンス。そこから現在に至る過程で各チームには順次EV共通キットの納品が開始され、主催者も2024年シーズンを来季6月初旬に開始することを確認し、都合5つの会場で全6戦のイベントを開催するスケジュールとなった。

 そのうち開幕“ダブルヘッダー”を予定するヨーテボリ市街中心部と、第4戦のヘルシンボリ港湾地区で予定されているストリート戦では、世界規模のイベントである『レース・オブ・チャンピオンズ(RoC)』に倣い、エリミネーション方式で2台のドライバーが同時に対戦する“Head 2 Head(ヘッズ・トゥ・ヘッズ)”のフォーマットが導入される。

「スウェーデン・モータースポーツ連盟、主催者、そしてチームとともに、こうして2024年に主要都市やサーキットでの強力なカレンダーを決定することができて非常にうれしく思う」と語ったのは、ここまで難しい舵取り役を務めてきたSTCC最高経営責任者(CEO)のミュッケ・ベルン。

「最終的に昨年の遅れから証明しなければならないことが山ほどあることは承知しているが、今はチャンピオンシップ史上最大の変革を適切に開始するための良い基盤を、ゆっくりと、しかし確実に構築しているところだ」と続けたベルンCEO。

「パズルの最大のピースのひとつはカレンダーであり、観客、パートナー、そしてエントラントに素晴らしいシーズンを提供するべく、都市のイベントとクラシックなトラックを組み合わせた、強力なセットアップを作成できたと思っている」

共通電動Kitの開発も請け負う盟主PWR Racingも『CUPRA Born(クプラ・ボーン)』のテストを開始している
最高出力550PS想定のモーターにより0-100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークする後輪駆動ツーリングカーとなり、最大800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する

■共通電動パワートレインは0-100km/h加速が3秒以下、最高速は300km/hをマークする

 独自規定BEV車両となるシリーズ初の電動モデルは、最高出力550PS想定のモーターにより0-100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークする後輪駆動ツーリングカーとなり、最大800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。そのバッテリー、モーター、サスペンションなどはすべてワンメイクとされ、コストを抑えつつ接戦を生み出すことが狙われている。

 その電動パワートレイン“キット”の開発を担当した、強豪PWRレーシングが運営する研究開発部門『EPWR』社は、この9月末にも新型クプラ・ボーンを公開し、精力的にテストマイレージを稼いできた。

「これは大きく重要な前進であり、最初の競技車両がついに登場し、2024年に向け本格的に準備を進めることができている。このプロジェクトに熱心に取り組んできた関係者全員にとって、これは信じられないほどのモチベーションになっており、2024年のSTCCに向けた厳しい冬の準備と実りの春を今から楽しみにしている」と語るのは、来季より“PWRクプラ・スウェーデン”として参戦するチームマネージャーのマーカス・エクストローム。

 同じく今回もPWRと協業するクプラ・スウェーデンのブランドマネージャー、パー・ブリンケンバーグも「我々は2016年にここで競技を開始して以来、チャンピオンシップにおいて重要かつ大きな成功を収めてきた」と、新時代に向けても力強いコミットメントを継続すると強調した。

「我々は長年にわたり、持続可能なモータースポーツの発展を推進するためPWRやSTCCの双方と緊密に協力してきた。もちろん、最初の新しい『クプラ・ボーン』の競技車両を見られたのは本当に楽しいね」

「このコラボレーションにより、電動化されたツーリングカーのパフォーマンスが完全に調和していることを、すべての人々に証明し続けることができるはずだ」

■STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権2024年カレンダー

ラウンド 開催日 開催地

Rd.1~2 6月8~9日 ヨーテボリ市街地(Head 2 Head)

Rd.3 6月28~29日 ユンビヘッド・モートルバナ(Airport Race)

Rd.4 8月24日 ヘルシンボリ港湾地区(Head 2 Head)

Rd.5 9月13~14日 クヌットストープ(NewsRace)

Rd.6 8月17~18日 マントープパーク(Grand Finale)

バッテリー、モーター、サスペンションなどはすべてワンメイクとされ、コストを抑えつつ接戦を生み出すことが狙われている
来季の市街地戦ではエリミネーション方式で2台のドライバーが同時に対戦する”Head 2 Head(ヘッズ・トゥ・ヘッズ)”のフォーマットが導入される

© 株式会社三栄