長崎・対馬市議13人 政治倫理条例に違反 核ごみ巡るNUMO負担の視察は「寄付」

 長崎県対馬市政治倫理審査会は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が費用負担する視察旅行に参加した市議13人について、市政治倫理条例に違反すると判断した。「政治的または道義的批判を受ける恐れのある寄付に当たる」とした。
 市が4日、調査結果報告書を公表した。市議会(定数19)は今年、処分場選定第1段階となる文献調査の受け入れ是非を巡り紛糾。促進請願を賛成多数で採択したが、比田勝尚喜市長は9月に「受け入れない」と表明していた。
 報告書によると、市議13人は2021年10月から23年4月の間、青森県六ケ所村や北海道幌延(ほろのべ)町にある最終処分関連施設を視察。交通費、宿泊費などはNUMOが負担し、食費は市議個人で負担した。このうち3人は請願に反対した。
 文献調査を推進するNUMOによる旅費負担について、報告書は政治的や道義的な批判を受けかねない寄付とみなし、「機構の利益を図る恐れがある」などと懸念を指摘した。
 市政倫条例に基づく調査請求は、市民団体「核のごみと対馬を考える会」の上原正行代表(78)が9月に実施。請願に賛成した市議10人の視察について、条例で禁じる企業団体からの寄付や金品の授受に当たると訴えていた。上原代表は取材に「寄付に当たるなら返金し、謝罪などの対応を取るべきだ。場合によっては収賄容疑などでの刑事告発も辞さない」と批判した。
 一方、違反と指摘された市議の一人は「勉強のつもりだったが、議会の費用で行くべきだった。襟を正したい」と話した。NUMO担当者は「処分事業の理解促進が目的。利益供与ではなく法令違反ではない」とコメントした。

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