冬彩るシマバライチゴ 火砕流を乗り越え実る 長崎県の天然記念物 島原市

30年前の千本木地区への大火砕流を乗り越え、鈴なりに実るシマバライチゴ。背景は平成新山=平成新山ネイチャーセンター

 長崎県天然記念物の野いちご「シマバライチゴ」が、島原市南千本木町の垂木台地にある平成新山ネイチャーセンターで、ルビーのような赤い果実を鈴なりに実らせている。
 同センターなどによると、シマバライチゴはバラ科で東南アジアから中国南部、台湾に分布。日本では本県と熊本県の一部にだけ確認されている。
 垂木台地は1993年6月、雲仙・普賢岳噴火災害で発生した千本木地区への大火砕流で焼け野原になった。同センターは2003年2月にオープンし、雄大な平成新山を望む敷地では、シマバライチゴなどの植物や、ツグミなどの野鳥を観察できる。
 05年に赴任した同センター職員の大脇一樹さん(47)は「大火砕流後、地中に残っていた種が芽吹いた。以前は大きな群落をつくっていたが、今ではササなどが茂るようになり、日当たりの良い場所を好むシマバライチゴは少なくなっている」と説明。「大火砕流から30年がたったが、あと数百年もすればここも島原の山々と同じ照葉樹林になるはず。植生の変化にも注目してほしい」と話している。
 シマバライチゴの見頃は1月上旬ごろまで。同センター周辺の島原まゆやまロード(県道千本木島原港線)沿いでも見ることができる。
 シマバライチゴは1904年に眉山で発見され、その後、植物学者の牧野富太郎が命名した。

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