「蘇民祭」閉幕に落胆と継続を願う声 奥州・黒石寺、苦渋の決断

記者会見で「多くの方々の期待を裏切る形になってしまうが、決断した」と説明する黒石寺の藤波大吾住職=5日、奥州市水沢

 「仕方ない」「何とか再興して」―。岩手県蘇民祭の根源、そして千年以上続くとされる奥州市の黒石寺(こくせきじ)蘇民祭が来年2月17日を最後に閉幕することになり、県民から5日、落胆と継続を願う声が広がった。目玉の蘇民袋争奪戦で男衆がぶつかり合う姿が全国から注目されてきた。だが、夜を徹して古式行事を繰り広げる主催者側の高齢化と、この先の担い手不足にあらがえなかった。

 「多くの方々の期待を裏切る形になってしまうが、決断した」。5日、同市水沢で記者会見した黒石寺の藤波大吾住職(41)の表情に覚悟がにじんだ。

 大切な役割を担う地元住民が参加できなければ、「寺の祭り」本来の趣旨から遠ざかってしまう―。祭りの継続を断念する一方で「護摩祈祷(ごまきとう)は続け、地域に根付く薬師信仰をつないで守っていく」として感謝の意を示した。

 例年、夜通しで古式行事を繰り広げてきたが、来年2月17日は午後6~11時の短縮開催となる。柴燈木登(ひたきのぼり)は見送り、裸参りや4年ぶりの蘇民袋争奪戦を行う。

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