【台湾】国家核心技術の第1弾を発表[経済] 半導体や情報セキュリティーなど

台湾行政院(内閣)国家科学・技術委員会(国科会)は5日、台湾の核心的技術の保護などを目的に「国家核心関鍵技術」の第1弾リストを発表した。半導体や情報セキュリティーなど5分野で22項目を選んだ。半導体業界からは「重要技術保護の助けとなり、台湾が(技術流出の)抜け穴になることはない」といった声が上がった。経済部(経済産業省)はファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の事業に影響は出ないと説明した。

立法院(国会)は昨年5月、台湾のハイテク産業の保護や重要技術の流出を防ぐことを目的とした「国家安全法」の改正案を可決。外国や中国・香港・マカオ、域外の敵対勢力などのために国家核心関鍵技術を侵害する行為を禁じ、国家核心関鍵技術の営業秘密を不正に取得するなどした場合、最高で12年の懲役を科すとした。

国科会の5日の発表によると、国科会は国家核心関鍵技術の項目を認定するため審議会を設置。産官学と研究機関の専門家を審議委員として招くなどして共同で審議を行った。中央通信社によると、議論は1年余りに及んだという。国科会は行政院(内閣)にリストを報告し、5日に対外的に発表して発効した。今後立法院で審査する。

第1弾のリストは、半導体(2項目)と情報セキュリティー(3項目)のほか、防衛(6項目)、宇宙航空(8項目)、農業(3項目)に関する技術を選んだ。国科会は「(台湾に)優位性があり、保護の緊急性が高いものだ」としている。

これらのうち、半導体分野では「14ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の製造プロセスのIC製造技術とその重要なガス、化学品および設備技術」と「ヘテロジニアスインテグレーション(異種統合)パッケージング技術—ウエハーレベルパッケージング技術、シリコンフォトニクスインテグレーションパッケージング技術および必要な材料や設備技術」を組み入れた。

国科会は「わが国の半導体産業は世界シェアトップであり、関連する産業チェーンの発展に高度に連動している。わが国の経済発展と産業競争力に強い影響力を持っている」とその重要性を説明した。

また情報セキュリティー分野に関しては「国家の安全とデジタル技術の核心であり、重要インフラの防護に関連している。情報セキュリティー分野の関連技術は保護の対象になる」と強調した。

■経済部「TSMCに影響なし」

経済部産業発展署の連錦ショウ(ショウ=さんずいに章)署長は中央通信社に対し、14ナノ以下の技術を国家核心関鍵技術とした理由について、「米国が技術管理の基準を14ナノとしており、国際的な基準に歩調を合わせたこと」と「台湾は14ナノ以下で世界シェアが約70%あり、通信や人工知能(AI)、車載電子などの分野で応用され、重要な技術であること」を挙げた。

台湾では14ナノ以下の製造プロセスの能力を備えているのはTSMCだけだが、TSMCは中国では14~16ナノの製造プロセスの半導体を生産しており、TSMCの事業活動の障害になることはないとの見方を示した。

中央通信社によると、政府からの資金援助が一定の基準に達した重要技術の機密に関わりがある人は中国に渡航する際に許可が必要になるという。経済部は今後関係者を確認し、内政部(内政省)移民署や本人に通達する。

■第2弾リスト発表も

中央通信社によると、半導体業界の関係者は、政府が14ナノ以下の技術を国家核心関鍵技術としたことについて「半導体の先端製造技術を台湾に留めておくという意図が明確に表れている」と指摘。企業の営業機密は一層保障されるとの見方を示した。同時に「台湾が国際的にハイテク分野で信頼できるパートナーになる」との見方を示した。

台湾民間シンクタンク、台湾経済研究院(台経院)産経資料庫の劉佩真研究員兼総監は、「世界の多くの国が半導体を重要な戦略物資と認識し、産業を育成しているほか、重要技術が流出しないよう保護している」と説明した。

その上で、台湾の半導体産業は先端製造プロセスで高い競争力を持っていると指摘。ヘテロジニアスインテグレーションやシリコンフォトニクスは重要性が高まっているとして「半導体の未来の重要技術であり、保護する必要性がある」とコメントした。

国科会の関係者は、今後の関連技術の発展や、米国や韓国などの産業発展に合わせて、産官学や研究機関の意見を幅広く取り入れ、3カ月後に再度検討し、第2弾のリストを発表するとしている。

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