支えてくれた「プラモデル」仲間 土砂災害から1年2カ月…再開までの軌跡(2)静岡市 /ニュースの現場

油山苑は今から57年前、1966年に創業しました。

大塚祐史さんの母・トミ子さん:「ここ全部茶畑だったんですよね。2年ぐらいお茶刈りをしていましたかね。そうしたら元湯館さんが『わしらのうち1軒しかないから、旅館をやらないかね。温泉はわしらのうちのを分けてやるから』って。そんな話から始まりました」

大塚祐史さん:「僕は父が街で別の仕事をしていたので、そちらの方で小さいころからずっと育ちました。たまに小学生の時にこっちに遊びに来て、母にだまされて ちょっと行くよと背負子を背負わされて、丸1日山に上がって、わらびとかぜんまいを取っていました」

大塚さんは大阪で日本料理の勉強をしたのち、25歳のころから油山苑の厨房で働き始めました。地元の食材をふんだんに使い 丹精込めて作られた料理や、自然に囲まれた露天風呂が評判となり、次第にリピーターが増えていきました。観光客だけでなく、スポーツの合宿利用も多く、水泳の日本代表チームが滞在したこともあるんです。

プラモデル愛好家が集まる宿に

大塚祐史さん:「静岡はプラモデルの生産が盛んなので、私も年代的にプラモデルを作っていた人間なので、プラモデル愛好家の方々に泊まってもらって、プラモデル三昧してもらおうと思って、いろんなアプローチをしてきました」

全国的にも珍しい、プラモデル作りの合宿ができる宿ということで、10年ほど前からモデラーと呼ばれる愛好家が集まるようになったんです。

(静岡ホビーショー)
大塚祐史さん:
Q.どんなプラモデルが好き?
A.「スケールモデルの飛行機、戦闘機、あとオートバイ。まさにこれ昔、乗らせてもらっていた」

5月中旬、大塚さんの姿は静岡市で開かれていた「静岡ホビーショー」の会場にありました。妻の郁美さんも一緒です。その目的は…

タミヤ社員「会長歩きながらですみなせん 油山苑さんがお世話になりましたということで」

郁美さん「本当にお世話になりました」

タミヤ 田宮俊作会長「元気だった?」

郁美さん「元気でやってます」

大塚さん「災害の時、いち早くいろいろしていただいてありがとうございました。また、ぜひ再開するので」

田宮会長「応援してるよ」

大塚さん「食事にいらしてください」

大塚さん「今の方はタミヤ模型の会長さんです。非常に仲良くしていただいているので、本当にうれしい限りです」

災害直後、静岡のプラモデル文化を盛り上げてきた油山苑に、県内の模型メーカーから様々な支援物資が届いたそうです。感謝の気持ちを、各社の代表に直接伝えることができました。

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「本日はモデラーズフリマへご来場いただきまして誠にありがとうとうございます」

こちらは、プラモデル愛好家のフリーマーケット「モデラーズフリマ」の会場。

大塚さん「すみません。よろしくお願いします」
店員「はい、分かりました」

大塚さんが手渡したのは、クラウドファンディングのちらし。フリーマーケットを主催する山田明子さんの厚意で、来場者に配布させてもらえることになったんです。

この日は、市内の雑貨店で働いている長男の賢輝さんも駆け付けました。

長男・賢輝さん「いろんな方のご協力、ご尽力のおかげでここまでこれた。本当に感謝しています」

大塚さん「陰ながら応援してくれています」

そして、うれしい再会もありました。

大塚さん「模型合宿で毎年来てくれる」
Qどちらから?

男性「東京です。再開した際には行かせていただきます」

大塚さん「ぜひまたよろしくお願いします。ありがとうございます」

大塚さん「こんなにもうちのことを思っていただけているなんて、あらためて実感して非常にうれしく思いました」

郁美さん「田舎の小さな宿屋なのに、この会場に来るとみなさんに声を掛けていただけて、静岡市が模型の街でよかったなというのを改めて思った」

© 静岡朝日テレビ