いいことずくめ?

 〈一番の理由は何だろうと想像を巡らせながら…〉とこの欄に書いたら、少し前の地方版に答え合わせのような記事が載った。長崎市の市立中学校のうち8校が次の新入生から統一デザインの制服に移行する話▲新しい制服は男女兼用で、冬服は紺色のブレザー。〈制服購入費を平準化して保護者の負担を軽くする〉〈生徒の多様性を尊重する〉-などと同市教委。防寒などの機能性も向上させ、伸縮性があって水もはじき、丸洗いもOKらしい▲ふむふむ。たとえば「男子はズボン、女子はスカート」のような決めつけは、来春と言わず今すぐにでも放棄されるべき固定観念の典型例だろう。生徒の個性や好みに応じて選択の幅が広がることは大歓迎だ▲着る生徒の数がある程度まとまった方が価格を下げやすいことも理解できる。学校への誇りを育てる方法は他にもあるだろうし、卒業生や地域の愛着は極論すれば“外野席”の意見だ▲ただ、それでも-とつい考えてしまう。そんなに“良いことずくめ”なら全校が一度に導入しないのはなぜだろう。学校のアイデンティティーが二の次でいいのなら、制服そのものが役割を終えている可能性はないか▲そもそも-。「多様性」の要請に応えるために導かれた解が「統一」だとしたら、何だか皮肉な話ではある。(智)

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