パワー半導体1300億円助成 加賀東芝、連携生産へ

  ●経産省、近く決定

 加賀東芝エレクトロニクス(能美市)、電子部品大手「ローム」など4社によるパワー半導体の製造計画に対し、経済産業省が最大で約1300億円を助成する見通しであることが7日分かった。パワー半導体は家電や電気自動車(EV)などの製造に欠かせない部品で、国は連携した生産体制の確立を後押しし、製品を安定確保する狙い。加賀東芝の能美市の工場では2025年3月から年42万枚を供給できる体制が整う方向で、石川産の半導体で国際競争力の強化を目指す。

 経産省は近く助成を正式決定する。東芝の半導体子会社「東芝デバイス&ストレージ」、ロームの子会社「ラピスセミコンダクタ」も計画に加わる。事業費の総額は3883億円。耐久性や省エネ性能の高いパワー半導体の量産に向け、国内の大手企業が手を組み、生産規模を拡大して価格競争力を高める。

 加賀東芝エレクトロニクスは今年4月、2千億円を投資し、同社敷地内でパワー半導体の新製造棟の建設工事を始めた。1期工事は24年3月に完了し、同年度内の稼働開始を予定する。その後の2期工事が完了すれば、生産能力が3.5倍になる見通しだ。

 関係者によると、東芝側はシリコン(Si)製、ローム側は炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体を製造する。ローム側は26年4月から、宮崎県の製造拠点でSiC製のパワー半導体を年間72万枚生産する。

 日本の半導体産業は1980年代後半、世界シェアの50%超を占めたが、その後は海外メーカーが伸長。パワー半導体の市場規模は2030年には約5兆円まで拡大するとみられているが、日本企業はトップを走るドイツの製造企業に大きく引き離されており、国は製造能力を高める投資を促して国内の半導体産業の再興を狙う。

 ★パワー半導体 電力のオンオフや電圧、周波数の調節、交流と直流の変換などに必要な半導体。電力を電子機器に応じた最適な状態にして無駄を減らす。自動車や家電、産業用機器、太陽光や風力発電に使われる。電力を効率的に利用できるため、脱炭素社会の実現に向け、市場の拡大が見込まれている。

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