忘年会シーズンに注意! 毎日の飲酒が大腸がんのリスクを高める

(写真:PIXTA)

忘年会のシーズンが始まった。毎日予定が入っているという人もいるのでは? お酒の飲みすぎが体によくないのはもちろんだが少量の飲酒でも連日となると病気のリスクが上がるという。

「今年の年末・年始は、数年ぶりに親しい人たちと集まって、おいしいお酒を酌み交わそう」と計画を立てている人も多いだろう。

ところが、この“忘年会”が、大腸がんのリスクを高めてしまうというのだ。

11月に厚生労働省が発表した「飲酒ガイドライン」(以下、ガイドライン)によると、少量のアルコール摂取でも、がんをはじめとする生活習慣病のリスクが上がることが示されている。

なかでも気がかりなのが、日本人女性のがんの死亡原因第1位の“大腸がん”。20年には約2万4千人もの女性が、命を落とした。

ガイドラインでは、1日当たり約2gの“純アルコール量”を毎日摂取すると、大腸がんになるリスクが上がるという。

“純アルコール量”とは、酒に含まれるアルコールの量のこと。「飲む量(ミリリットル)×アルコール度数(%)÷100×0.8(アルコールの比重)」で算出できる。純アルコール量が約20gとなる酒の量の目安は、酒類によって次のように異なる。

ビール(5%)なら500ミリリットル(ロング缶1本)、ワイン(12%)なら200ミリリットル(小グラス2杯程度)、チューハイ(7%)なら350ミリリットル(ショート缶1本)、日本酒(15%)なら1合弱、焼酎(25%)なら100ミリリットル(グラス1杯程度)。

こうして改めて確認すると、思った以上に「飲めない」ことがわかる。忘年会ともなれば、すぐオーバーしてしまいそうな量なのだ。

「連日のアルコール摂取は、できるだけ控えるべきですが、忘年会シーズンで、どうしても飲んでしまう場合は、飲酒前や飲酒中の“食べ物”を工夫してみましょう」

そうアドバイスするのは、アメリカ在住の医学博士で内科医の大西睦子さん。

■意識的にビタミンB6が含まれる食品を摂取

大腸がんリスクの低下が期待できる食品群があるという。

「これまで、さまざまな研究機関が大腸がんリスクを下げる食品の研究を進めてきました。それらによると、飲酒とは関係なく大腸がんリスクを下げる食品として推奨されるのは、食物繊維やビタミンが豊富な(1)野菜や果物(2)玄米や全粒穀物(3)豆類やナッツ、良質なタンパク質が含まれる(4)赤身魚や鶏肉、カルシウムが豊富な(5)乳製品などです」(大西さん、以下同)

こうした食品のなかで、とくに飲酒前や飲酒時に、積極的に摂取したいのが“ビタミンB6”を多く含むものだという。

「国立がん研究センターの研究では、1週間に純アルコール量で150グラム以上(毎日、ビールロング缶1本以上)飲酒する方において、ビタミンB6の摂取量が多い人のほうが、大腸がんになるリスクが低いことが明らかになっています」

なぜ、ビタミンB6の摂取が大腸がんリスクを下げるのか。

「ビタミンB6は、体の健康を保つために必要な酵素の生成に欠かせない成分で、大腸がんなどの細胞増殖を抑制する働きもあると考えられています。

しかし、アルコールを摂取するとビタミンB6の吸収が妨げられ、かつ分解されてしまう。
それを補うために、アルコールを多く摂取する人は、意識的にビタミンB6が含まれる食品をとる必要があるのです」

栄養不足に陥りがちな高齢者やダイエット中の女性などは、ビタミンB6が不足しやすいので注意。

あまり耳慣れない“ビタミンB6”だが、どんな食品に含まれているのだろうか。

穀類なら玄米にもっとも多く、魚介類ではカツオやマグロなどの赤身魚、野菜類ならししとうやブロッコリーなど。そのほか、ゴマなどに多く含まれる。

■飲む前の新習慣に“玄米ゴマおにぎり”

そこでおすすめなのが、飲み会前に“玄米ゴマおにぎり”で小腹を満たしておく方法だ。

「玄米は100グラムあたり0・21ミリグラムと、白米に比べて10倍以上もビタミンB6が豊富。同じくビタミンB6が豊富なゴマを大さじ1杯程度混ぜた“玄米ゴマおにぎり”を飲酒前に食べることで、手軽に1日に必要なビタミンB6を摂取できます」

空腹時にいきなりアルコールを摂取すると胃や腸に負担がかかるため、それを防ぐためにも飲酒前に食べておくとよい。

お酒のおつまみには、ビタミンB₆の多いブロッコリーの炒め物や、カツオやマグロの刺身、ナッツ類などをチョイスしよう。

ただし、1日あたりのビタミンB6の推奨摂取量は、成人女性で約1.1ミリグラム。連続して過剰に摂取すると、感覚神経障害などを起こす可能性もあるため、サプリメントなどで過剰に摂取するのは控えよう。

「基本的には、偏らずにバランスよく食べることが大切です。とくに女性は、分解できるアルコール分が男性より少なく、女性ホルモン・エストロゲンの働きによってアルコールの影響を受けやすい。

また、高齢になれば、体内の水分量が減少するため、同じアルコール量でもリスクが高まります。

飲酒時には、ビタミンB6の豊富なメニューに加えて、水分もしっかりとるようにしましょう」

忘年会で大腸がんリスクを上げないためにも、飲食前や飲食時の食習慣を見直そう。

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