青森、秋田両県にまたがる白神山地は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産登録決定から9日で30周年を迎えた。8千年前の縄文時代から広がる原生的なブナの森は多様な動植物の生態系を育み続けている。一方でニホンジカの侵入、クマゲラの減少など、この30年で生態系は変化している。
白神山地は、鯵ケ沢町と深浦町の間にある大戸瀬崎を北の頂点にした、約13万ヘクタールの大きな三角形の山域。このうち約1割に当たる中心部約1万7千ヘクタールが「世界遺産地域」となった。ユネスコは東アジア最大の原生的なブナ林を中心とする特徴的な生態系に「顕著で普遍的な価値」を認めた。
1993年12月9日(日本時間)、南米コロンビアで開かれたユネスコの世界遺産委員会は、白神山地と屋久島(鹿児島県)を日本初の世界自然遺産に登録することを決めた。同11日に正式に登録され、白神は将来にわたって守っていく人類共通の財産になった。
80年代、西目屋村と秋田県八森町(現八峰町)を結ぶ「青秋林道」の建設が進んだ。だが、林道建設へ反対する住民の声が結集し工事はストップ。その後の世界遺産登録につながった。自分たちの森を守りたいという、地元の素朴な思いが出発点だった。
入山規制による環境保全が学術研究などで役割を果たし、観光業などの利活用も進む。一方、白神の「保全」と「活用」との兼ね合いを巡っては、登録から30年たった現在も議論が続いている。