県の「パートナーシップ宣誓制度」第一号 「同性婚」を認めない日本で共に生きることを選んだ同性カップル

日本は、G7各国の中で唯一、同性婚や、同性カップルの権利を保障する国の制度がありません。そんな中、岐阜県の「パートナーシップ宣誓制度」の第一号となった同性カップル。同性婚が認められていない日本で、共に生きていくことを決めた二人の想いや現状を追いました。

青年海外協力隊の活動で知り合った2人…「一緒に生きていく人生」

祝福の中、教会の中を進む男性2人。この日、谷村祐樹さんと中村文亮さんは、LGBTQ支援を掲げるブライダル会社のキャンペーンで、ウェディングセレモニーと記念撮影を行いました。谷村さんと中村さんは、3匹の猫と一緒に岐阜市内の一軒家で暮らしています。

(谷村祐樹さん)
「僕が青年海外協力隊で活動していたのがタンザニア。中村くんが活動していたのがケニア。(国が)隣同士なので文化も結構似ていて、言語もスワヒリ語」

共に青年海外協力隊で活動していたのが縁で知り合い、意気投合。出会って7年になる2人の部屋には、思い出の写真がたくさん飾られています。

(中村文亮さん)
「写真はすごく撮るようにしていて、めちゃめちゃあるよね」

2人で暮らそうと決めた後、社会にはLGBTQへの壁が確かにあることを実感したと言います。

(中村文亮さん)
「いつも思い出すのは、アパートを探していて入居もOKみたいな感じだったんですけど、“男性2人”っていうのをお伝えした時に急に『面接がしたい』みたいな感じに言われて。歓迎されていないんだなと思って、それはこちらからもお断りした」

各地の自治体に広がりを見せる「パートナーシップ制度」

日本では法的に認められていない、同性カップルの結婚。2人で家を借りること、相手の手術の同意など、夫婦でごく当たり前のことができない場合も少なくありません。

こうした中、各自治体で広がっているのが「パートナーシップ制度」です。便宜上、家族であることを自治体として認め、公営住宅への入居や養子を迎える里親制度への登録などが可能になります。2人は2023年9月、岐阜県で導入された「パートナーシップ宣誓制度」の第1号となりました。

(谷村祐樹さん)
「すごく特別な日になりました」

(中村文亮さん)
「例えば国民的なアニメだったり、いろんなところで(LGBTQは)ちょっと笑ってもいいみたいな扱いを受けていた。公に認めていただけるというのは、いままでになかった感覚。嘲笑を受けるんじゃないかというのが、やっと大丈夫なんだとすごく感じている」

2人にとって、こんな風に認められる日が来るとは思っておらず、頑張って生きてきてよかったと感じる一日となりました。それでも法的に“家族ではない”状況に変わりはなく、配偶者控除や相続などは認められません。

(谷村祐樹さん)
「パートナーシップ制度だけでは保証されない部分ってすごく大きくて、扶養控除や税金、自分たちにも結婚の選択肢が持てるような社会になれば一番いいと思う」

「勇気と希望をもらった」“同性婚訴訟”名古屋で違憲判決

オランダやアメリカ・フランス・台湾など、世界35の国と地域で認められている同性婚ですが、日本はG7各国の中で唯一認めていません。そんな中、全国5か所で婚姻の平等を求める「同性婚訴訟」が続いています。今のところ、名古屋を含む4つの地裁で「違憲」、もしくは「違憲状態」との判断が示されています。名古屋地裁の判決の日、谷村さんも傍聴に訪れていました。

(谷村祐樹さん)
「勇気と希望をもらった。“違憲”と言っていただいて、味方になってもらったような気がした」

LGBTQ関連の裁判では2023年10月、最高裁でトランスジェンダーが戸籍を変更する際、生殖能力をなくす手術が必要なのは「違憲」だという判断も示されています。名古屋では広く同性カップルの現状について知ってもらおうというイベントも開かれました。そこには、結婚セレモニーを上げた谷村さんたちのパネルも。

(ミッレ・フォーリエ法律事務所 堀江哲史弁護士)
「憲法違反だとはっきりと裁判所が認めたことは、当事者を力づける判決だったと思う。100人いれば100通りの性的志向、性自認があるなかで、特定のあり方だけ差別的に扱うのはおかしいという考え方が、もっとしっかり広まっていけばいいと思う」

(谷村祐樹さん)
「自分が誰か人生のパートナーを見つけるなんてことは、もうできないだろうなと思っていましたし、結婚とか、家族をつくるとか、子どもとか、そんな選択肢はないものなんだな、自分一人で自立して生きていかないといけないと、結構小さい頃から思っていた」

(中村文亮さん)
「無いものばかり見て生きてきた時期があったから、すごく苦しかったし、自分には未来がないと思うことがあった」

2人での生活が始まっても、「社会の壁」がなくなったわけではありません。年を重ねれば、看取りや相続などの現実に直面することは増えてくると考えています。いつか必ず「壁」を痛感する日がくるという覚悟もしているという2人。差別なき社会を作っていくことは、国の責務であることは言うまでもありません。

CBCテレビ「チャント!」11月27日放送より

© CBCテレビ