最優秀賞に深江さん(長崎大付1年) 遠藤周作読書感想文コンクール 重い主題に素直に向き合う

「語れる限りのことは書けたのでよかった」と話した深江さん=長崎市文教町、長崎大付属中

 長崎市遠藤周作文学館(同市東出津町)は、長崎県とゆかりが深い作家の故遠藤周作の生誕100年を記念し、全国の中高生を対象に遠藤作品の読書感想文を募集したコンクールの入賞者を発表した。中学生部門は長崎大付属中(同市)1年の深江貴心(あつまさ)さん、高校生部門は湘南白百合学園高(神奈川県藤沢市)2年の小糸楓子(ふうこ)さんが最優秀賞に輝いた。
 長崎市の生誕100年記念事業の一環として7~9月、初めて募集。計70点の応募があった。最終審査委員を同市在住の芥川賞作家、青来有一さんら4人が務めた。
 深江さんの「『沈黙』遠藤周作を読んで」は、本県を舞台に江戸時代のキリシタン弾圧を描いた遠藤の代表作が題材。「棄教を迫る幕府側と、信奉する教えを絶対に捨てない切支丹(きりしたん)。どちらの気持ちも、ぼくには理解できなかった」と心情を素直に表現。同書を読んで人生と信仰の意味を考えたとして、「この本に出会ってよかった。ただこみ上げてくるものがあって、ぼくは、それ以上、語ることも出来ない」と結んだ。
 夏休みの読書感想文に「沈黙」を選び、長崎歴史文化博物館(同市)や舞台となった同市外海地区でキリシタン弾圧の歴史も学んだという深江さん。取材に「読んだ時はショッキングで、中学生が語れる内容ではないと重い気持ちになった。結論が見つからず悩んだが、語れる限りのことは書けたと思うので(受賞は)良かった」と話した。
 「キリストのまなざし」と題した小糸さんの作品も「沈黙」が題材。残酷な迫害に対する神の沈黙と、踏み絵を踏む瞬間に心の中で神に赦(ゆる)しを求めた人々の沈黙の両方に着目。「沈黙の中にあるとても深い対話こそが、人々に対する神の最大の愛の証」とつづった。
 入賞作品は遠藤周作生誕100年記念事業公式サイトで読むことができる。来年1月下旬、同文学館で表彰式がある。

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