大分大と県、大雨被害の3市で避難行動の実態調査開始 分析・共有し防災対策向上へ【大分県】

大雨の際の避難行動について、住民に聞き取り調査をする大分大の学生ら=9日、由布市湯布院町川西

 大分大減災・復興デザイン教育研究センター(CERD=サード)と県は、今年6~7月の大雨で大きな被害が出た由布、日田、中津の3市で避難行動の実態調査を始めた。当時は線状降水帯が発生するなど激しい雨に見舞われ、相次ぐ土砂災害や河川氾濫で4人の命が失われた。早期避難の浸透などが課題となる中、住民の意識や行動を分析し、行政と共有して防災対策の向上につなげる。

 初日の9日は、大規模な地滑りがあった由布市湯布院町川西の畑倉・上津々良の両地区を対象に調査した。地元の集会所で当時の雨量や避難情報を振り返る研修会を開き、集まった13世帯の住民にアンケートをした。

 災害ボランティア活動などに取り組む大分大の団体「学生CERD」のメンバー16人らが、避難をしたかどうかやその理由、事前にハザードマップを確認していたかなどを聞き取った。

 畑倉地区の農林業麻生源吉(もとよし)さん(74)は、地滑りで崩落した土砂に巻き込まれて男性(70)が亡くなった現場の近くに住んでおり、当時は大分市内の娘の家に避難した。「男性にも逃げるように何度か声をかけたのだが…。今回の経験が教訓として生かしてもらえれば」と語った。

 上津々良地区の農業女性(80)は自宅にとどまったという。「怖かったので避難したかったが、嫌がる家族がいて残すわけにはいかなかった」と振り返った。

 同センターは10日に日田市小野と大鶴の両地区、来年1月に中津市耶馬渓町で実態調査をする予定。

 センター長の鶴成悦久(よしひさ)教授(46)は「3市はそれぞれ雨の降り方が異なり、避難行動にも違いがあるのではないかと考えている。データは細かく分析し、県や市町村と共有する。早期避難に向けた取り組みなど、災害から命を守る施策に生かしたい」と話した。

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