担当エンジニアも感心したJujuのフィジカルと学習曲線「マイレージを稼げば、Q1突破は見えてくる」

 12月6〜8日に鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同/ルーキーテスト。3日目のルーキー走行枠終了後、TGM Grand Prixのピット裏には人だかりができていた。ファンの目当ては、このテストで初めてスーパーフォーミュラをドライブしたJujuこと野田樹潤だった。

■体力面を心配するチームに「もっと連続で周回したい」

 元ドライバーの野田英樹氏を父に持つ17歳のJujuは、2020年よりデンマークに拠点を移し、ヨーロッパで活動を行ってきた。デンマークF4選手権を経て2022年には女性ドライバー限定フォーミュラであるWシリーズに参戦。直近の2023シーズンはユーロフォーミュラ・オープンに参戦してポール・リカール戦で優勝したほか、ZINOX F2000 TROPHYではシリーズタイトルを獲得している。

「3日間、本当にすごく良い練習をすることができました。スーパーフォーミュラ、思った以上に楽しかったので、いい経験をさせてもらったチームには感謝ですね」。可能な限りのファン対応の後、ミックスゾーンに姿を現したJujuは取り囲んだ報道陣に対し溌剌と語った。

「初めてのスーパーフォーミュラで、鈴鹿を走るのもほぼ初めて。正直、どっちも難しかったのですが、少しずつタイムを縮めることもできて、大きなミスもなく3日間走り切ることができたので、それはすごく良かったです」

 Jujuは初日のセッション1で1分41秒870という自己ベストを記録。そこからセッションごとにタイムを上げていき、良好なコースコンディションとなった2日目午後のセッション4では1分38秒539まで縮めた。首位・小林可夢偉からは、2.243秒のギャップとなる。

「すごくレベルの高いカテゴリーですし、出ている選手も本当にトップレベルの方ばかりなので、この中に混じらせていただくと本当に毎回毎回、自分自身が成長できているなと感じます。もし(レースに)出られることになれば、すごく自分にとって大きなステップになるなと思います」

 初日終了時点で「いまのところ大丈夫そう」と語っていた体力面については、「3日目はさすがに疲れは出てきましたが、今年乗っていたクルマでも3日間フルで乗っていたら少しは疲れが出るので」と問題にはならなかったようだ。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト Juju(TGM Grand Prix)

 2023年、TGMで53号車のトラックエンジニアを担当し、今回のテストでもJujuのエンジニアを受け持った上城直也氏によれば、今回のメニューは、完全にマシンとコースへの慣熟にあてられていたという。

「最終戦で(大草)りきが予選を走ったときのクルマをベースにして持ち込んで、1日目に松下(信治)選手に乗って評価をしてもらい、同じ状態でJujuが乗ったときに足りないところはどこか、と探していく形にしました。共通ダンパーは、2日目に向けて装着しました」

 初日の走り出しはJujuのフィジカル面に配慮し“数周走ってはピットに戻る”というランプランを立てていたが、「慣れるために、もっと連続で周回したい」とJuju側からリクエストがあり「15周とか13周とか、ほぼロングランのような」走行となったという。

「シートポジションが悪く、腰が少し痛いとは言っていましたが、それ以外は全然問題ないということで、意外とフィジカルが大丈夫そうだな、というのが第一印象でした。それは3日間終わっても同じですね」と上城エンジニア。

「ただ、他の日本人のルーキードライバーと比べると、鈴鹿が初めてという部分が大きいですね。とくに、鈴鹿特有のS字の走り方を見つけるという部分では、少し時間がかかったかなと思います。とはいえそれも2日目の終わりにはだいぶ良くなりましたし、そこで他のルーキードライバーと同じスタートラインに立てたような気がしましたね」

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト Juju(TGM Grand Prix)

■父・英樹氏からの的確なアドバイス

 3日目の午前中には曲げる方向にセットアップを変更し、そのフィーリングを元に午後はアジャストを加えた。最終セッションはそれまでと風向きが逆方向へと変化したため、それに合わせたセットアップもいくつか試したという。

 細かなアジャストをセットアップに加えていくためには、ドライバーからのフィードバックのコメントが重要となるが、「SFになると細かいセットアップアイテムもいろいろありますし、そこはさすがにレギュラードライバーと比べてしまうと足りない部分はあります」と上城氏。

「ですが、乗ってみたところの印象はきちんとコメントしてくれるので、あとは僕の方がもう少し細かく対応できればいいのかなと思います」

 これまでもJujuとともに戦ってきた父・英樹氏が鈴鹿でもチームに帯同していたが、上城エンジニアとしても、元ドライバーである野田氏からのアドバイスは貴重なものになったようだ。

「僕は自分で運転するわけでもないので、たとえば鈴鹿のライン取りなどに関しては『こうじゃないかなぁ』くらいにしか言えないのですが、(野田氏は)コースで見ていても、オンボードで見ていても、『他のドライバーはここでステアリングを切り込んで、ここでアクセルを抜いているよ』といった形で、的確にアドバイスをされているんだなと感じました」

 まだ来季の体制に関する発表はないが、仮にJujuがスーパーフォーミュラのレースに出場するとなった場合、まだまだポジションを上げていける余地はあると上城エンジニアは見込む。

「トップから2秒落ちということでもっとレベルアップはしなければいけませんが、(3日間フルで走っても)まだ鈴鹿の経験は他のドライバーたちより少ない状態です。開幕前の鈴鹿テストでマイレージを稼いで、ギャップを詰めていけば『Q1突破』は見えてくると思います。また、今回はロングランと言えるほどのメニューはやっていませんが、SFの場合は予選が少し悪かったとしても、ロングランのペースがしっかりとしたものであれば、ポイントは獲得できる。チーム全体で考えていけば、ポイント獲得というあたりまでは、見えるのではないかと思います」

Jujuと父・野田英樹氏。手前が上城エンジニア

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