【ミャンマー】中国主役の繊維産業、展示会で友好アピール[繊維]

ミャンマーで開催された衣料品産業の展示会の様子=8日、ヤンゴン(NNA)

ミャンマーの最大都市ヤンゴンで10日までの3日間にわたり、衣料品の展示会が開催された。「軍事政権が中国とミャンマーの友好関係をアピールする政治的な側面が強い」(業界関係者)催しで、100社以上が参加したが、大半は中国系だった。一方、国際衣料品大手によるミャンマーからの調達停止が相次ぐ中、現地の縫製工場関係者からは「輸出加工拠点としての強みや雇用維持の重要性を理解してもらいたい」と訴える声もあった。【小故島弘善】

展示会は「ミャンマー・インターナショナル・テキスタイル・アンド・マシーナリー・フェア」。ミャンマー縫製業者協会(MGMA)とミャンマー中国紡織服装協会(CTGAミャンマー)が共催。現地で操業する日系、韓国系の縫製企業が加盟する業界団体も参加した。

ただ、ある業界団体の関係者は「中国とミャンマーでイベント開催の話が進み、角が立たないように参加した」と打ち明けた。ミャンマーで操業する日系企業の多くは不参加。MGMAは「ミャンマーの衣料品産業の持続的な発展に向け、中国との経済的結び付きを強める」ことが展示会開催の目的だとしている。

中国の生地メーカー関係者は、「中国製の製品をミャンマーにも売り込みたい」と話した。ミャンマーには工場を構えていないが、輸出先としての商機を探るためにブースを設置。ジャケットの生地などを縫製工場に売り込んだという。

MGMAによると、10月時点で操業中の加盟工場は529社で、このうち約6割は中国系。生地の多くを同国から調達し、人件費を抑えられるミャンマーの縫製工場を輸出加工拠点として活用している。

■「人権対応」で意見分かれる

衣料品はミャンマーの主要輸出品目だが、国軍によるクーデターが勃発した2021年以降、同国から製品を調達する国際ブランドは評判リスクにさらされている。軍政下で人権侵害が横行しているとの批判が高まり、複数のブランドが撤退。今年8月にはスウェーデンの衣料品大手H&Mがミャンマーからの調達の段階的停止を決めた。

国際ブランドの撤退が進み、逆に雇用が悪化して人権リスクが高まるとするのがMGMAだ。縫製工場で働く、女性を中心とする数十万人が職を失う恐れがあると指摘し、各ブランドに踏みとどまるよう求めている。

業界関係者は、「問題は確かにあるが、(多くの縫製工場が集積する)ヤンゴンの状況を正しく理解してほしい」と語った。他地域と比べて情勢が安定的で、地方の紛争を逃れて縫製工場で働く人もいる。経済悪化で雇用の機会が限られる中、同業界が果たす役割が大きいという。

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