東南アジアでモバイルゲーム市場が拡大している。今年の市場規模は100億米ドル(1兆4,300億円)を超え、ユーザー数は2億人台の半ばに達する見通しだ。東南アジアを中心にゲームのエコシステムを構築するアンプバース(Ampverse、本社・シンガポール)の共同創業者であるフェルディナンド・グティエレス最高経営責任者(CEO)に、域内のモバイルゲーム市場の動向と同社の役割を聞いた。
——東南アジアのモバイルゲーム市場の状況は。
スマートフォンが増えたことで市場が拡大している。2023年の市場規模は110億米ドル、ユーザー数は2億5,000万人を超えることが予測されている。インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、シンガポール、フィリピンの6カ国が主要な市場だ。
——東南アジアではどのようなモバイルゲームが成長をけん引しているのか。
ユーザーがキーボードや画面に触れなくても遊ぶことができる「AFK」系のゲームを好む人もいれば、大規模な多人数同時参加型のオンラインロールプレーイングゲーム「MMORPG」のようなソーシャル系のゲームを楽しむ人もいる。
最大のトレンドは、複数のプレーヤーが2つのチームに分かれて対戦する「MOBA」系ゲームの人気が上昇していることだ。「モバイル・レジェンド」や「ワイルドリフト」などがインドネシアやベトナムといった国で人気があり、域内のモバイルゲームの成長と普及の原動力となっている。
——アンプバースは東南アジアで、どのようにゲーマーやビジネスパートナーを増やしているのか。
当社には3つのビジネスユニットがあり、それぞれが魅力的な体験、サービス、製品を通じてファンとブランドをつなぐために戦略的に組織されている。
eスポーツチーム、ソーシャルコミュニティー、オリジナルコンテンツ、eスポーツトーナメントを所有・運営する部門では、専属およびパートナータ人材の幅広いネットワークを活用し、著名なeスポーツチームをマネジメントしている。次世代インターネット「ウェブ3.0」技術などを活用した「ミナナ(Minana)」や「アンプ3(Amp3)」といったソーシャルコミュニティーも展開している。
2つ目のマーケティング部門では、eスポーツパートナーシップ、仮想世界マーケティング、ゲーム内広告、ゲームキャンペーンのコンセプト立案などカスタマイズされたサービスを提供している。
3つ目の研究開発部門では、ゲーマーの膨大なネットワークに到達するための革新的なマーケティングソリューションをマーケターに提供している。マーケターはゲームの要素を取り入れた教材「ゲーミフィケーション」を活用し、限定アイテムやコレクターアイテムなどの非代替性トークン(NFT)の報酬を統合することで、顧客エンゲージメント(顧客との結びつき)とロイヤルティーを高めることができる。
——日本のゲーム業界との結びつきは。
日本の大手ゲーム会社と仕事をしている。ローカルマーケティングの専門家として、日本のゲームを東南アジアで発売し、事業拡大を支援してきた。日本ではゲームが文化として深く根付き、多くのモバイルゲーム会社が成功を収めている。当社の経験を生かして新しいアイデアや戦略を提供することで、引き続き日本のゲーム業界の成長を加速させることができると信じている。(メールインタビュー:Celine Chen)
<プロフィル>
アンプバース:
2019年設立。ゲームコミュニティーとゲーム大会のエコシステムを管理している。シンガポール、タイ、フィリピン、インドで100人以上の従業員を雇用する。電通のCEO(アジア太平洋地域担当)で、元ディズニーのマネジングディレクターであるメディア業界のベテラン、ロブ・ギルビー氏や投資会社を含む戦略的投資家が支援している。
フェルディナンド・グティエレス氏:
アンプバースの共同創業者でCEOを務める。デジタル広告代理店ニューメディアやゲーム会社サンドボックスなど複数の会社を設立する一方、グローバル・コミュニケーション・グループであるハバスのCEOや、ビデオゲームのライブストリーミング会社ツイッチ(Twitch)の東南アジア地域ディレクターなどを歴任してきた。