「メディアが報じないガザ地区」を映し出したドキュメンタリー映画緊急上映!『ガザ 素顔の日常』 &『ガザ・サーフ・クラブ』

『ガザ 素顔の日常』© Canada Productions Inc., Real Films Ltd.

ガザの“日常”を知る

2023年10月7日、ハマスによるイスラエルへの攻撃をきっかけに大規模な侵攻が勃発。「テロリスト制圧」という名目で始まった攻撃はガザ地区に暮らす非武装の一般市民の命をも脅かし、行方不明者を含めるとすでに2万人以上が亡くなったとされている。

この対テロ戦争という名の侵略による惨状は、ガザ地区に暮らす人々が「一人でも多くの人に知ってほしい」という藁にもすがる思いでスマホ撮影した亡き家族の姿や、命の危険を顧みず現地に残るジャーナリストたちによって世界中に拡散されている。英米&独はイスラエル支持の姿勢を崩さないが、じわじわと「ガザを守れ」「パレスチナを開放せよ」という世論が盛り上がってきている。

とはいえイスラエル側の見解を報じるTVニュース等を見ていても、なかなかガザ侵攻の真実は見えてこない。実際にはスマホひとつあれば誰でもほぼリアルタイムの情報を得ることはできるが、プロパガンダに長けたイスラエル発の情報と並べて俯瞰しようとすると、いきなり靄がかかったように真実が見えなくなる……と頭を抱えている人も少なくないだろう。

そんな人に、いや、思想信条問わずあらゆる人に観ていただきたい映画が、東京23区よりも狭い場所に暮らす200万の人々の生活を映し出した『ガザ 素顔の日常』と、世界最大の“天井のない監獄”に閉じ込められた若者たちが躍動する『ガザ・サーフ・クラブ』という、2作のドキュメンタリー映画だ。

いま観るべき! 緊急再上映中『ガザ 素顔の日常』

ガザは縦50km・横幅は5~8kmという細長く狭い面積にパレスチナ人約200万人が暮らしている、世界で最も人口密度が高い場所の一つ。多くの人が貧困にあえいでいて、イスラエルが壁で囲み封鎖したため物資は不足し、しかも現在は毎日容赦のない爆撃を受け、まさに風前の灯と言えるだろう。それでもガザには、日常を力強く生きようとする人々がいる。その姿を映し出したドキュメンタリー映画が『ガザ 素顔の日常』だ。

「世界で最も危険な場所」「紛争地」といったイメージを持つ人であれば、この映画で全く違うガザの一面を発見することだろう。穏やかで美しい地中海に面しているガザの気候は温暖で、花やイチゴの名産地。若者たちはサーフィンに興じ、ビーチには老若男女が訪れる。海辺のカフェのとびきりハイテンションな店主に朝会えば、きっと誰もが幸せな一日を過ごせるはずだ。他にも妻が3人、子どもが40人いる漁師のおじいちゃんなど、個性豊かなガザの人々に、きっと魅了されるに違いない。

しかし現実は過酷だ。陸も海も空も自由が奪われたガザは「天井のない監獄」と呼ばれ、住民の約7割が難民で貧困にあえいでいる。それでも日常を力強く生きようとする人々がいる。現実逃避するためにチェロを奏でる19歳のカルマは、海外留学して国際法や政治学を学びたいと考えている。14歳のアフマドの夢は、大きな漁船の船長になり兄弟たちと一緒に漁に出ることだ。

「欲しいのは平和と普通の生活」――ガザの人々は、普通の暮らしを今日も夢見ている。

『ガザ 素顔の日常』はシアター・イメージフォーラムにて緊急再上映中、ほか全国順次公開

僕らはこの海で、自由をつかむ。『ガザ・サーフ・クラブ』

もう一つ、2024年1月13日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて緊急公開されるのが『ガザ・サーフ・クラブ』。普通の人々の暮らしに焦点をあてた『ガザ 素顔の日常』と同じく、ガザの若者たちがサーフィンに興じる様子を捉えたドキュメンタリー映画だ。

イスラエルとエジプトに挟まれたガザ地区は、約200万人の人々が狭い土地に閉じ込められている。経済封鎖が続くガザでは船舶の自由な出入りはなく、入る物資も出ていく物もほとんどない。若い世代は仕事もなく、未来への展望のないまま日々を送っている。

2014年のハマスとイスラエル間の紛争は、イスラエル軍の地上侵攻に発展し、多くの人命が奪われ、多くの建物が破壊された。しかし、このような状況下でも、若い世代は自由を求めて海に繰り出し、サーフィンに興じている。厳しい制裁にもかかわらず、多大な努力の末、約40本のサーフボードがガザに持ち込まれ、ガザ市のサーフ・コミュニティはにわかに盛り上がっているのだ。

海で感じられる刹那の幸せや自由を求めて集う若者たち。彼らの視線の先には自由な世界が広がっているが、果たしてその扉は開くのだろうか――。

『ガザ・サーフ・クラブ』は2024年1月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか公開

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