そして首位はジローナになった…/原ゆみこのマドリッド

[写真:Getty Images]

「これをアトレティコにしてもらいたかったのよ」そんな風に私が悔しがっていたのは月曜日、前夜にジローナがエスタディオ・オリンピコでバルサを2-4と圧倒した試合の様子を振り返っていた時のことでした。いやあ、折しも1週間前、シメオネ監督のチームもモンジュイックでの上位決戦に挑む機会があったんですけどね。逆に力が入り過ぎて変なことになったか、その大一番ではアトレティコのお家芸、「眠ったままピッチに立つ」が発動。今季はこれまでほとんどなかった、「3度もパスが続かない」状態に陥り、前半29分にはあろうことか、ジョアン・フェリックスに古巣恩返し弾を喰らい、そのまま1-0で負けてしまうことに。

それがジローナと来たら、30本近くバルサにシュートを撃たれながら、平常心を保って、いつもの攻撃サッカーを貫き、ドブビクの先制点はレバンドフスキに帳消しにされたものの、ハーフタイム前にRMカスティージャ出身のミゲール・グティエレスが勝ち越しゴールをゲット。後半終盤にバレリが3点目を追加した後、ギュンドガンに1点を返されながら、ロスタイムにはここ2試合、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)が続いていたベテランのストゥアーニも決めて、最後は4点まで行ったんですが、もしこれをアトレティコがやっていたら、一気に今季リーガ優勝最有力候補に躍り出ていたのでは?

いえ、この勝利でジローナもレアル・マドリーに勝ち点2差つけて、単独首位となったため、堂々たる優勝候補と言ってもいいかもしれないんですけどね。ただ、ミチェル監督が謙虚に「Estamos salvados, con 41 puntos/エスタモス・サルバードス、コン・クアレンタイウノ・プントス(勝ち点41でウチは残留確定した)」と言っていたように、彼らは2部から戻って来て2年目のまだ、1部定着を目指しているチーム。実際、10月にはホームでマドリーに0-3でコロッと負けたなんてこともありましたし、アトレティコが今季初対戦でモンテリビを訪れるのも年明けの3日とあって、この1位から4位まで勝ち点7ある4チームの順番がシーズン前半最終節でどんな風になっているのか、今はまだ、何とも言えないんですが…まずは先週末のマドリッド勢の試合を振り返っていくことにしましょうか。

トップバッターを務めたのは前節同様、金曜試合となり、コリセウムにバレンシアを迎えたヘタフェだったんですが、連休中のせいもあって、かなりスタンドの入りは良かったものの、立ち上がりはどうにも冴えない展開に。前半ロスタイムになってやっと、ボルハ・マジョラルがホームチーム初のシュートを放ったぐらいだったんですが、相手も全然、大したことはしていませんでしたからね。それこそ、「Hasta la fecha tenían los mismos puntos que nosotros/アスタ・ラ・フェチャ・テニアン・ロス・ミスモス・プントス・ケ・ノソトロス(今日までウチと同じ勝ち点数だった)」(ボルダラス監督)のに納得できる拮抗ぶりだったんですが、スコアレスのまま、後半が始まってすぐ、波乱が起きることになろうとは!

というのも前半終盤に抗議でイエローカードをもらっていたパウリスタが5分、ラタサの顔をはたいてしまい、2枚目のイエローカードで退場させられてしまったからで、ええ、確かに数的優勢になったおかげで、その後のヘタフェは敵陣にずっと入り浸ってはいたんですけどね。グリーンウッド、ルイス・ミジャ、ジョルディ・マルティンらのシュートがことごとく、GKママルダシビリに弾かれてしまい、なかなかスコアに反映されなかったため、ボルダラス監督も25分以降にはアレニャ、オスカル・ロドリゲス、マタらを投入してチームをリフレッシュ。ただ42分、とうとうイグレシアスのクロスをヘッドして、先制ゴールを挙げてくれたのは最初から出ていたマジョラルだったんですが、もうこれで彼はリーガ9得点目ですからね。

コパ・デル・レイでの2ゴールと合わせて、すでに二桁を記録しているとなれば、今季はローマ時代の2020-21シーズン、自己最多の通算17得点も軽く更新できるかも。おかげで虎の子の1点をゲットしたヘタフェは、ええ、その1分後には好都合にも20才のハビ・ゲラが、「Eres malísimo, malísimo!/エレス・マリシモ(あんたは最悪だ)」と口を滑らせ、主審の怒りを買って一発退場。バレンシアは9人になってしまいましたからね。

それだけにロスタイムにドゥアルテが敵を汚い言葉で罵ったとして、こちらもレッドカードをもらってしまったのは残念でしたが、大丈夫。そのままヘタフェは1-0で逃げ切り、「Era el último partido el año en casa y queríamos darles una victoria/エラ・エル・ウルティモ・パルティードー・エル・アーニョ・エン・カサ・イ・ケリアモス・ダールレス・ウナ・ビクトリア(今年最後のホームゲームだったから、ファンに勝利を贈りたかった)」(ボルダラス監督)という目標を達成することができましたっけ。

そして翌土曜、マドリッド勢今節唯一のアウェイゲームとなったのがマドリーだったんですが、相手のベティスは先週ミッドウィーク、コパ・デル・レイ2回戦があったのとは対照的に、アンチェロッティ監督のチームは1週間丸々準備期間に充てられましたからね。体力的には有利なんじゃないかと思ったんですが、ベニト・ビジャマリンでの一戦も前半は両者、スコアレスで終わることに。いえ、16分にはベリンガム、ロドリゴと繋ぎ、最後にブライムがゴールを決めていたんですけどね。この時は僅かにロドリゴがオフサイドの位置にいたため、スコアに挙がらず、逆に31分には予想を覆して先発続行となったGKルニンがアジョセの強烈シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、難を逃れたなんてことも。

それでも後半8分にはようやくスコアが動き、ええ、今季はもう定番となったベリンガム弾ですよ。ブライムがエリア内に入れた敵DFの頭を越すパスから決めて、自身リーガ12得点目としたんですが、どうもこの日のマドリーは前後半通じての枠内シュートがたったの2本と、他の選手たちが続いてくれなくてねえ。21分に「Siempre me dice la familia que tengo que tirar más/シエンプレ・メ・ディセ・ラ・ファミリア・ケ・テンゴ・ケ・ティラール・マス(いつも家族にもっとシュートするべきだと言われている)」というルイバルがエリア外から決めたgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)にはシャッポを脱ぐしかなかったとはいえ、同点にされた後も時間はたっぷりありながら、誰も勝ち越しゴールを挙げることはできず。

アンチェロッティ監督がモドリッチやブライム、クロースに代えて投入したセバージョス、ホセル、ニコ・パスもほとんど、チームのパフォーマンスを改善するのには役に立ちませんでしたし、44分にイスコのヘッドがゴールポストに嫌われず、古巣恩返しゴールになっていたら、それこそ大変なことになっていたはずですが、そのまま試合は1-1で終了。「No siempre se puede ganar. Estoy contento con el punto, de verdad/ノー・シエンプレ・セ・プエデ・ガナール。エストイ・コンテントー・コン・エル・プントー、デ・ベルダッド(常に勝つことはできない。私は本当にこの勝ち点1に満足している)」(アンチェロッティ監督)という結末になったんですが、いやあ。

だってえ、結局、この引分けのおかげで日曜にはバルサに勝ったジローナが単独首位に立った訳ですからね。とりあえず、今週は火曜午後9時(日本時間翌午前5時)にCLグループリーグ最終節のユニオン・ベルリン戦をプレーするため、もう月曜には現地入りしたマドリーですが、こちらはすでに1位突破が確定済み。アンチェロッティ監督がこの試合にはGKケパが先発復帰すると予告していたのも、逆に年内残り2節となるリーガのビジャレアル戦、アラベス戦でルニンが続投する布石なのかもしれませんし、とりあえず、これ以上、ケガ人だけは増やさずに帰って来てくれるといいですよね。

え、それで日曜にメトロポリターノに戻って来たアトレティコは前節の敗戦ショックから立ち直れたのかって?そうですね、相手が最下位のアルメリアということもあり、ホームのファンに後押しされる中、自信を持ってスタートしたのが良かったか、前半6分には早くもグリーズマンがゴールを入れることに。こちらは残念ながら、VAR(ビデオ審判)にオフサイドとされ、スコアには昇らなかったんですが、それでも17分にはグリーズマンが敵陣で取り戻したボールをモラタに送ると、ドリブルで敵GKもかわした当人がとうとう4試合ぶりのゴールを決めてくれたから、ファンもどんなに喜んだことか。

おまけに22分にもグリーズマンからパスを受けたジョレンテがゴール前のコレアにアシストし、さくさくと2点目が入った時にはgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の予感すらしたというのに、いやホント、何でここでアトレティコの選手たちは気が抜けちゃうんでしょうかねえ。30分過ぎにアルメリアがCKを6回程、連続して蹴っていた頃から、あのモンジュイックでの前半の悲惨なチームがちらほら顔を出し始め、一応、前半は2-0で終わったんですが、後半になるともういけません。7分のエンバルバのヘッドはGKオブラクが弾いてくれたものの、それから10分。今度はポソがエリア外から入れたクロスがレオ・バプチストンに当たり、飛んできたボールをオブラクが弾くもこぼれ球を押し込まれ、ええ、まんまとこの日も古巣恩返しゴールを決められることになるとは!

うーん、後でシメオネ監督は「El rival también juega. Perdieron el miedo al partido y lo hicieron bien/エル・リバル・タンビエン・フエガ。ペルディエロン・エル・ミエードー・アル・パルティードー・イ・ロ・イシエロン・ビエン(敵もプレーする。彼らは試合への恐怖を失くして、上手くやった)」と、アトレティコが劣勢になったのは自己責任だけではないことを主張していたんですけどね。あんなにタイミングばっちりなラストパスを送れるジョレテンテが、まるでジキルとハイドのように敵目掛けて真っすぐ蹴るシーンなどを見せられると、もう何が何だか、私もわからなくなってきますが、一度、混乱状態に陥ったアトレティコは15分にモラタ、デ・パウルがメンフィス・デパイ、サウールに、そして30分にはコレア、アスピリクエタ、サムエル・リノがモリーナ、ヒメネス、リケルメと交代枠を使い果たしても回復することはできず。

ええ、それこそ相手が今季1勝もしていないアルメリアだから、何とか2-1で逃げ切れたようなものですからね。あとは「Me voy contento por los 35 minutos y a trabajar para solucionar los otros/メ・ボイ・コンテントー・ポル・ロス・トレインタイシンコ・ミヌートス・イ・ア・トラハバール・パラ・ソルシオナール・ロス・オトロス(良かった35分で満足して、あとは他のことを解決するために働くだけ)」というシメオネ監督の言葉を信用するしかないんですが、それでもクラブ記録のホーム連勝を19に伸ばすことはできましたからね。今はあまり悲観せず、水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのCLグループリーグ最終節、ラツィオをメトロポリターノに迎える試合でも勝利を重ねて、20連勝でグループ首位突破を確実にしてもらいたいところですが、さて。

そして月曜にはもう1つの弟分、ラージョが16節のトリを飾ったんですが、前節にサン・マメスでアスレティックに4-0と惨敗した鬱憤を降格圏にいるセルタ相手に晴らそうしたものの、残念ながら、ベニテス監督の築いたセルタの防壁を最後まで破ることはできず。いえ、むしろGKグアイータのせいと言うか、2018年までヘタフェでプレーした後、プレミアリーグのクリスタル・パレスで5年間、修行してきた彼がRdT(ラウール・デ・トマス)やイシにゴールを許さなかったせいなんですが、逆にイアゴ・アスパスがベンチスタートだったのは、セルタが得点するチャンスをますます狭めただけだったかと。

結局、0-0で終わったラージョはこの日もエスタディオ・バジェカスでファンの歌う「La vida de pirate/ラ・ビダ・デ・ピラタ(海賊人生)」を聴くことはなく、ヘタフェと勝ち点差2の10位に。今週はどういう訳か、金曜試合を当てがわれたため、中3日でオサスナとのアウェイゲームに挑まないといけないのは少々、不公平かと。ただ、それが終われば、来週のミッドウィーク開催リーガ、バレンシア戦を火曜に済まして、もうフランシスコ監督のチームはクリスマスのバケーションに入れますからね。21日の木曜に18節アラベス戦が組まれているマドリー、それどころか、23日の土曜に延期されていた4節セビージャ戦を入れられてしまったアトレティコなどより、お休みの日数も多く取れるのは羨ましいかと。ヘタフェ共々、コパ・デル・レイに生き残っている限り、1月はハードスケジュールが続くため、あまり週2試合ペースに慣れていない弟分たちにしてみれば、きっと有難い休暇になりますよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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