世界で最も難民の多いシリア…難民キャンプから届いた映像、彼らの癒しになっているのは

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。11月30日(木)放送の「New global」のコーナーでは、現地からの映像とともに“シリア難民の今”を紹介しました。

◆約1,200万人が帰る場所なし…依然厳しいシリア難民

当番組では度々シリア難民の現状を伝えてきましたが、最近ではパレスチナ・イスラエルの戦闘が拡大し、シリアの首都ダマスカスの空港などがイスラエル軍の攻撃を受け閉鎖。10月にもイスラエル軍の空爆で一時閉鎖し、運用再開したばかりでした。

一方、今年2月にはトルコ・シリアに跨った地域で大地震が発生するなどさまざまな要因があり、現在は国内避難民が約680万人。国外に逃れる難民は約536万人。総勢約1,200万人もの人が故郷を追われています。

しかも、周辺国に逃れようとしてもシリア人を拒む地域があるそうで、キャスターの堀潤は「どこに属せばいいのか、不安な思いを抱えている方が今も大勢いる」と案じます。

そうしたなか、当番組ではかねてからヨルダンにある「ザータリ難民キャンプ」に注目していました。そこではピーク時20万超の人がおり、現在も帰る場所のない8万人の方々が生活。しかも、その半数は子どもだそうで「(子どもの)多くはキャンプ周辺から外に出たことがなく、外の世界がどうなっているのか(わからない)。さまざま自由も制限されている」と堀。

この日は、そんなザータリ難民キャンプで暮らしているシリア人のヤーセルさんから届いた現地の映像を紹介しました。

◆平和の象徴であり、シリア人からも愛されている"鳩”

そこに映っていたのは、さまざまな種類の鳩。難民キャンプ内には鳩小屋があり、みんなで鳩を飼育しているそうで、そこで暮らす子どもたちにとっては鳩が飛び立つ様子を見るのが癒しになっているとか。

鳩の歴史は古く、堀によると紀元前・旧約聖書の時代からこの地域で鳩は平和の象徴とされ、時に伝令・伝書鳩としても使用。また、愛でる対象でもあり、もともとシリア国内では多くの人が鳩を愛し、飼っていたそうです。

一方で鳩は軍事的にも利用もされ、堀曰く、例えば情報の伝達役だったり、小さなカメラをつけてスパイとしても使われていたとも。それは日本も同様で、靖国神社には鳩の慰霊塔が建っていることを補足します。

鳩にまつわる堀の一連の話に、元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは大きく頷き、「平和の象徴であると同時に軍事の象徴でもあり、報道の自由、ニュースを背負って働いてきた歴史もある」と鳩の第3の特性を示唆。

八代さん曰く、かつては天皇皇后両陛下の行幸のフィルムを鳩の足につけて東京に飛ばすなど、現在の朝日新聞社には伝書鳩を讃える碑もあるそうで、「人間の使い方次第で鳩は平和の象徴にも、軍事の象徴にも、表現の自由を下から支えてくれるものにもなると感じた」と痛感します。

食文化研究家の長内あや愛さんは、ヤーセルさんから届いた映像を観て鳩が現地の方々の癒しになっていることに納得しつつ、「日本でも最近はフムス(ひよこ豆のペースト)などシリアで昔から食べられているようなものが健康食志向で流行っているし、シリア料理のお店も増えている。それは(シリアのことを)知るきっかけとしていいことだと思うが、ただおいしいと食べるだけでなく、こうして大変な状況があることまで知らなくてはいけない」と複雑な心境を吐露。

また、ノンフィクションライターの吉川ばんびさんは、「日本にいると鳩は公園にいたり、その辺を歩いている印象しかなく、平和に結びつけにくかったり、軍事的な利用をされてきたことを感じられないが、シリアの難民の子どもたちにとっては鳩が自由に飛んでいく姿に自分を投影したい部分があると思うと胸が痛むし、感じるものがあった」と感慨深そうに語ります。

そして、最後に堀は、シリアはまだまだ厳しい状況にあるため、「関心を持ち続けてください。シリアもまだ終わっていない。支援を待っています」と訴えていました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

© TOKYO MX