リア・ブロック緊急昇格の週末はオリバー・エリクソンが今季初優勝/Nitrocross第6-7戦

 北米大陸を代表するラリークロス会場、カリフォルニア州のグレンヘレン・レースウェイで開催された2023-24年『Nitrocross(ナイトロクロス)』第6-7戦は、イベント開催直前に発表されたリア・ブロック(バーモント・スポーツカー)の最高峰クラス『グループE』デビューが話題を集めるなか、初日はオリバー・エリクソン(オルスバーグMSE)が今季初勝利を挙げ、日曜はドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク(DRR JC)の王者ロビン・ラーソンが、選手権リードを拡大する今季3勝目を飾っている。

 アメリカ発の新生シリーズとして、従来のNitroRX改め『ナイトロクロス』としてスタートを切ったチャンピオンシップだが、引き続き12月9~10日のダブルヘッダーには元GRCグローバル・ラリークロス経験者で『X GAMES』メダル16個獲得のブライアン・ディーガン(DRR JC)や、欧州ベルギーからは2022年の『FIA RX2eチャンピオンシップ』王者ヴィクトル・ブランクス(VMVレーシング)が初参戦を果たすなど多くの話題を集めた。

 そんななか、大会直前の12月7日付でここまで併催ステップアップの“NRX NEXT”に参戦してきたリア・ブロックの昇格がアナウンスされ、最高出力1080PS(800kW)、0〜100km/h加速約1.4秒というフル電動ワンメイクEVの専用モデル『FC1-X』を操る史上最年少かつ初の女性ドライバーになることが発表された。

 現在17歳のブロックは、シリーズ創設者兼初代王者トラビス・パストラーナ(バーモント・スポーツカー)のマシンをシェアし、ダブルヘッダー後半戦の日曜に初出場を果たすプランとなり、彼女の父親である故ケン・ブロックが同チーム(VSC)でラリーのキャリアをスタートさせたことを考えると、誰にとっても感傷的な巡り合わせとなった。

「14歳で初参戦を果たしてから3年が経った現時点で、こうしてトップクラスに辿り着くことができたなんて、考えるのもクレイジーね」とまずは驚きを語ったブロック。

「この“ギャップジャンプ”を始めたころからずっとやりたいと思っていた。これはまさにすべてが一巡して原点に還ったような気分で、トップでレースする機会を与えてくれたトラビスとVSCのチームにとても感謝している」

 そんな彼女の最高峰昇格を後押ししたパストラーナも、リアのキャリアが「自身で切り開いてきたモノ」であることを強調する。

「リアは勉強が早く、間違いなく素晴らしい才能を持っている。ケンは彼のジムカーナビデオに出演させてくれることで、僕に輝く機会を与えてくれた。チームの協力を得て、リアが僕のクルマのステアリングを握り、世界最高のドライバーたちと一緒にレースする機会を与えることができて、これ以上に興奮することはないよ」と続けたパストラーナ。

大会直前の12月7日付でここまで併催ステップアップの“NRX NEXT”に参戦してきたリア・ブロックの昇格がアナウンスされた
土曜の第6戦はオリバー・エリクソン(オルスバーグMSE)が今季初勝利を挙げた

■ブロックは落ち着いたドライブを披露も、最終LCQで無念の結末

「彼女は自分さえ望めば、その資質によって父親が誰であるかに関係なく何者にでもなれるんだ。彼女は僕がこれまで見たことのないレベルの自信と、他の人ができないスピードを見つける天性の能力を持っているし、とてもうまくなるだろう。彼女はケンの娘としてではなく彼女自身の“レガシィ”として、リア・ブロックとして最善を尽くすはずさ」

 そんな彼女は、引き続き初日をNRX NEXTに参戦してRX Lite車両をドライブし、元王者キャスパー・ヤンセンに次ぐ2位表彰台を記録し、翌日のグループEデビューに弾みをつける。一方、最高峰クラスではポールポジションから力強い逃げを見せたオリバー・エリクソンが、2番手発進アンドレアス・バッケルド(DRR JC)の転倒にも助けられ、コナー・マテル(バーモント・スポーツカー)を振り切って昨季カナダ戦以来の勝利を手にした。

 明けた日曜、いよいよ『FC1-X』に乗り換えたブロックはヒートレースでも落ち着いたドライブを見せ、今季並行参戦するワンメイク電動オフロード選手権『エクストリームE』で培ってきた電動車両のドライビング経験を遺憾無く発揮してみせる。

 しかし予選ヒートも突破し、全8台のファイナルにコマを進めた彼女だったが、最後の“LCQ(ラスト・チャンス・クオリファイアー)”でまさかのモーター故障に見舞われ、決勝のスタートを切ることができないという無念の結末に。

 これにより、最後はフレイザー・マッコーネル(DRR JC)やケビン・エリクソン(オルスバーグMSE)を退けたチャンピオンが、昨季タイトル獲得を決めた地で今季3度目のトップチェッカーを受け、4位にはファイナル初進出のブランクスが続く結果となった。

 来季24年はウイリアムズF1配下の契約ドライバーとして、ARTグランプリから自身初のシングルシーターとなるF1アカデミーへの参戦が決まっているブロックだが、彼女自身はサーキットレースへの移行が差し迫っているにも関わらず、グラベル競技出場への扉は閉ざされていないと主張した。

「もちろん、辞めなきゃいけない理由はない」と続けたブロック。「(F1アカデミーは)全7戦あり、その間にはテストもあるけれど、ワンオフでラリーやナイトロクロスに参戦する機会や時間はいくらかあるはずよ」

「私は何に対してもオープンで、ジェームズ(・ボウルズ/ウイリアムズ・レーシング代表)でさえ『行って好きなことをしなさい、シートタイムはどこでだってシートタイムだ』と言ってくれた。だから、つねにクルマに乗っているのは良いことなの」

全8台のファイナルにコマを進めた彼女だったが、最後の“LCQ(ラスト・チャンス・クオリファイアー)”でまさかのモーター故障に見舞われ、決勝のスタートを切ることができないという無念の結末に
日曜はドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク(DRR JC)の王者ロビン・ラーソンが、選手権リードを拡大する今季3勝目を飾っている

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