「金融教育」実践的な学びの場とは?高校生が模擬会社設立・書籍販売

立命館宇治高の模擬会社が行った除籍本の販売会。営業、会計、広報などを生徒が務めた(宇治市広野町・市植物公園)

 株式会社の仕組みを実践的に学ぶ場をつくろうと、京都府宇治市広野町の立命館宇治高に、生徒が運営する模擬会社が設立された。図書室の除籍本を再利用した販売事業を行い、黒字経営や利益分を活用した社会貢献事業を目指している。

 11月下旬、同校の向いにある市植物公園の一角に、模擬会社「アール ブックス株式会社」のブースが設けられた。役員や社員を務める生徒らが店頭に立ち、5時間で304冊を売り上げた。本の仕入れや同公園への出店交渉、会計、ポスターなどの広報までを生徒が担った。

 同社は11月1日に立ち上がったばかりだ。資本金として、一株1円で2万株を発行。生徒や教員が株主となり、一人千株をそれぞれ購入した。越智規子校長が株式の半数以上を買い押さえているのは、TOB(公開買い付け)を防ぐという設定だ。

 学習活動のため、株主配当は行わないとした。年度末の株主総会で決算報告と会社の解散手続きをした後に、株主には出資金と同額を返済する。それ以上の利益分は、学校に寄付することで図書購入費などに充ててもらう見込み。

 近年、教育現場では金融教育の拡充が進んでいる。昨年度からは高校の家庭科で、投資などによる資産形成の視点を踏まえた授業が始まった。今回の取り組みを企画した担当教諭は「教科書で習う内容を、リアリティーを持って学べる機会をつくりたかった」と語る。

 模擬会社といえど、校内のオフィスの賃料や水・光熱費、本の運搬費や倉庫代などの諸経費を含めて収支をやりくりしている。新たな販売の機会を交渉中で、利益を生かして校内に緑を増やす活動も計画している。

 代表取締役社長をしている3年の女子生徒は起業が夢といい「売れ行きの予測が難しい。これまで商品を売り買いする場面にしか接してこなかったが(普段は知りにくい)事業の流れを学べた」と話している。

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