「なぜ今」「我慢すべきだった」 五輪招致、アルバム作戦で知事答弁 県議、職員が困惑

一般質問が行われた12日の県議会。馳知事がアルバム作戦について答弁した

 東京五輪招致を巡り、馳浩知事が自身のブログに記した「想い出アルバム作戦」の詳細を一転して説明したことを受け、県政界に困惑が広がっている。これまで一貫して説明を避けてきたにも関わらず、12日の県議会で共産党の一般質問に対し突然答弁。身内の自民県議や県執行部からは「なぜ今」「我慢すべきだったのに」とあきれる声が漏れる。一部では擁護論も聞かれるものの、「制御不能」(県幹部)の知事の言動に「県の施策がかすんでしまう」との批判もせり出す。

 「官房機密費を使っていないならいないと、1冊20万円という金額が違うなら違うと、なぜ答えられないのか。せめて想い出アルバムとは何だったのか、それぐらいは答えられるのではないか」。12日午後の県議会一般質問。佐藤正幸氏(共産)は再質問でアルバムについてこう尋ねた。

  ●「アドリブ」で答弁

 これに対し、馳氏は「五輪招致に関する発言は全面撤回したので改めて発言はしない」と従来の表現を繰り返した。その上で「当時の立場や役割については県議、県民に伝える必要がある」と続け、「自民党の予算を使って招致活動を行った」「アルバムは参考資料として数冊作成した」などと述べた。いずれも県が事前に用意した答弁書にはない「アドリブ」だった。

 その後の報道陣の取材には、アルバムは党費で作成し、国際オリンピック委員会(IOC)委員に贈っていないとも説明した。ただ、内閣官房報償費(機密費)を使ってアルバムを贈ったとする11月17日の講演での発言を修正したのかとの問いには回答しなかった。

 先月の発言後、「五輪招致に関して今後一切発言しない」として口をつぐんできた馳氏。自らの言葉に反する12日の動きに、自民県議はため息をつく。

 「なぜあんな余分なことを言ったのか」

 馳氏を支持する自民県連最高顧問の福村章氏は首をかしげた。「撤回したのなら『県政に没頭する』とだけ言い続けるべきだった。サービス精神が旺盛だから、質問を重ねられて少し話してしまったのだろう」と推測した。

 6日の自民代表質問で登壇した紐野義昭氏は「突然言い出すのも、共産党に答弁するのも、馳流の感性と言うほかない。もう驚かない」とあきれ気味。スピード感のある県政運営は評価されているとした上で、「それを自ら帳消しにしては困る」と注文を付けた。

  ●裏金報道見越し?

 馳氏の突然の説明には、国政を揺るがす安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金問題で、自身のニュースがかき消されるのを狙ったとの見方もある。未来石川の吉田修氏は「13日は臨時国会の閉会日。これまで以上に裏金問題に報道が集中するのを見越し、県議会で答弁したのではないか」と見立てた。

 困惑は県議以外からも聞かれた。ある県幹部は「なぜこのタイミングで言ったのか全く分からない。まさにアンコントローラブル(制御不能)」と強調し、「馳知事ばかりに視線が集まり、県の施策が注目されなくなっているのはいかがか」と苦言を呈した。

 12日の報道陣の取材で馳氏は、IOC委員全員にアルバムを贈ろうとしたが、自民党の予算不足で断念したと説明。加えて、IOC倫理規定に抵触する懸念もあったと述べた。別の県幹部はこの点について「贈答していないとする理由が予算不足なのか、倫理規定違反なのか判然としなかった」と冷静に指摘した。

 一方、元県幹部は「アルバム作戦は事実なのだろう。どこかで話そうとしていたと思う。記者会見ではなく、県民の代表である県議に議会で聞かれたから話しただけだろう」と擁護した。

 共産党県委員会の秋元邦宏委員長は「アルバム作戦の記述があるブログのつじつまを合わせるためだけの回答だ。説明責任を果たしたことにはならない」と非難を強めた。

© 株式会社北國新聞社