在日香港人の民主活動家にインタビュー、香港に戻らない選択をした理由に堀潤が迫る

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、民主活動家へのインタビューの模様とともに“香港の現状”を紹介しました。

◆民主活動家を縛り付ける香港の国安法

香港の民主活動家で2019年の反政府デモを巡って実刑判決を受け、一昨年出所した周庭さんが、留学先のカナダ・トロントから自身のInstagramで「香港には戻らない」と表明。これは事実上の亡命の可能性があります。

周庭さんは香港国家安全維持法違反の罪で起訴される可能性が残っており、香港警察に出頭する必要がありましたが、「香港情勢や自分の安全、心理面の健康を考慮し、戻らないと決めた」と説明。一方、香港警察は「法に公然と反する無責任な行為を厳しく非難する」との声明を出しています。

香港国家安全維持法(国安法)とは「香港での反政府活動を取り締まる法律」で、"国家分裂”、"政権転覆”、"テロ活動”、"外国勢力との結託による国家安全への危害”などを犯罪行為として取り締まっています。

しかも、これは外国人も適応対象となっており、キャスターの堀潤は「私も仲間たちが香港に入ろうとすると、ことごとく入国拒否にあっている」と話します。

また、周庭さんをはじめ多くの香港人が日本のメディアのインタビューを受けたという理由だけで「外国勢力との結託による国家安全への危害を加えようとしている」とみなされるなど犯罪行為の定義が広範で、堀は「あらゆる行為において当局が判断すれば国安法で起訴できるということから、世界中の香港民主派たちの活動を縛っている」と指摘します。

さらに、香港には"密告ホットライン”なるものもあり、これは国安法に関連する事案について市民からの通報を受け付ける専用窓口のことで、SNS上で誰が何を発信しているのかも密告の対象に。こうした状況に、堀は「強い疑心暗鬼のなか、精神的にも肉体的にも多くのものが奪われている」と危惧。

先日、1週間ほど香港を訪れていたという「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんは、そのときの様子について「今月、(香港で)選挙があるのでどこを見ても選挙の広告だった」と回顧。しかし、「一見、民主主義があるようだが、その実態はそうではないというところで、(香港で)起きていることは本当に恐ろしい」と案じつつ、周庭さんら海外で暮らす香港の方々の安否、健康を慮ります。

◆民主活動家が語る"発信”の重要性

香港に戻らない選択をした香港人は世界中に数多くおり、堀はそのうちの1人、在日香港人で民主活動家のウィリアム・リーさんにインタビューを実施。

まずは周庭さんの報道について聞いてみると、「彼女の勇気と家族が今後も無事にいられることを祈るだけでなく、ともに戦い、守っていけるような体制を日本でもカナダでも、世界のどこの国でも作っていきたい」と思いを語ります。

ウィリアムさんは2014年の雨傘運動に参加した後、2019年のデモでは香港警察に逮捕されました。現在は日本で暮らしていますが、その活動は当初よりも情報発信が落ち着いているそうで、「今回の周庭さんの件である程度香港の厳しさを知っていただけたと思うが、発信を大切にしないと本当に潰されてしまう可能性が日本だけではなく世界各地にある」と発信を続ける重要性を強調。

香港から世界に民主化を訴えかけたにも関わらず、今なお中国の弾圧が続くなか、最後に「国際社会とは何か」を聞いてみると、ウィリアムさんは「基本となるのは人。日本にいる我々としても立派な国際社会の1人、一部であることを忘れないでほしい。参加・手伝いできる人はぜひその場で手伝い、少しでもその輪を広めることで国際社会は動いていく」と答えていました。

インタビューを行った堀によると、ウィリアムさんは今回、日本に対しての感謝の気持ちも述べていたそう。なぜなら、日本では自由に表現しても罰せられることなく、さらには今なお続く中国当局からの嫌がらせや監視などに対し、日本の公安警察がガードしてくれているから。

ウィリアムさんは「日本ならアジアで安心して声が上げられる」と話す一方で、「その日本もいつどのようにして体制がガラッと変わってしまうかもしれない」と案じ、「民主主義とは仕組みじゃない。当事者が考え、行動することが民主主義であり、そうしたことを伝えたい」と話していたそうです。

一連の話を聞き、元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは、中国が海外に展開する手法に言及。「中国が外国に仕掛ける"三戦”のなかには"認知戦”、"情報戦”、"法律戦”があり、法律戦というのは自国の法律を海外にも押し付けようというもの。海外の主権下で自分たちの警察能力を発揮しようと"秘密警察”を設け、それはニューヨークでも摘発の対象となっている」と解説。その上で「トロントにいる周庭さんも秘密警察の対象になるのではないかと非常に危惧されているが、それを守れるのは"国際社会の認識”だと思う」と言い、さらには「やはり私たちは伝え続けることが大事」とも。

経済アナリストの馬渕磨理子さんは、香港の問題やイスラエルの問題などを通して「日本はどうすべきか」、「発信することにどんな意味があるのか」などさまざまな問題に頭を痛め、自問自答していたそうですが、今回当事者の声を聞き「やはり日本も国際社会の一役を担っているという意味では、しっかりと声を上げていくことが重要だと思った」と感想を口にします。

最後に堀は「極東においては完全民主主義の国として日本は非常に大事な場所。香港のドキュメンタリー映画がアジアのどこで上映するのかといえば小劇場が残っている日本。日本で上映し、世界に発信される。そうして日本は(世界の)ハブになっていきたい」と素直な思いを語っていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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