ブライダルで人気の花、アスチルベ 佐世保の10農家 出荷量日本一

「100万~120万本の出荷量を維持するのが目標」と話す吉村さん=佐世保市内

 長崎県佐世保市に栽培農家わずか10戸で日本一の出荷量を誇る花がある。ブライダル用などで人気が高いアスチルベ。独自のカラーリング技術で不動の地位を築き、全国シェアは約9割。全国の生花業界から「なかなか買えない」との声が相次ぐ産地を訪ねた。
 「国内で一番長く出荷している」。新替町の吉村晴喜さん(71)はビニールハウスを前に胸を張った。吉村さんによると、露地栽培が主流で出荷期間は約2週間前後。対して吉村さんらは夏場を除く約8カ月間と群を抜いて長い。露地とハウスを組み合わせ、出荷時期を少しずつずらしたことで長期化が実現したという。
 市内では主に三川内や柚木、黒髪、宮各地区の約3ヘクタールで栽培される。吉村さんが部会長を務めるJAながさき西海アスチュルベ部会は、2022年産で約115万本を出荷。21年産は最も多い約124万本に上った。
 佐世保産アスチルベを一躍有名にしたのは独自技術によるカラーリングだ。生花に色を付けることには賛否両論あったが、吉村さんが開発した“門外不出”の技術で、本来のピンクや白を黄や青、紫などに染色。染色液を茎から吸わせるのが一般的だが、花の生育状況などによって色むらが出てしまうため、花に直接振りかけて自然な色を出すのが特徴だ。
 花屋との情報共有にも力を入れる。ニーズを取り入れ、色合いに季節感を出すことでアレンジの幅が広がった。花屋が交流サイト(SNS)でアレンジを紹介すると、珍しさが見る人の目を引き、注文が相次ぐように。吉村さんは「花が足りないくらい」とうれしい悲鳴を上げる。
 現在、関東や関西を中心に全国24市場に出荷し、部会の売り上げは約1億円に上る。吉村さんは「全国的にもっと知られるように頑張りたい。少ない人数ですごいことをやっていると思われるとうれしい」と笑顔を浮かべた。

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