障がい者の“自立”を支援 東京新聞木原記者の活動に密着

きょうのコメンテーターの木原さんは、東京新聞の特別報道部の記者として取材を続ける一方で、社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持ち、様々な人をサポートする活動も行っています。「社会での独り立ちを目指す」精神疾患のある女性を見守る木原さんの活動を取材しました。

この日、木原さんが精神疾患がある女性と向かったのは、都内にあるマンションでした。ここは、精神的な病気などに悩む人たちが「自立した日常生活」を送れるよう、短期間の一人暮らしを経験するための部屋です。

25歳の時に知的障がいがあると診断されたけいさん(仮名)。さらに27歳で集中力や記憶力などに影響がある「高次脳機能障害」と診断されたといいます。この部屋では、ケアスタッフがスケジュールの管理を手伝ったり、買い物に同行したりと様々なサポートをしてくれます。

木原さんは今回、精神障がい者の支援体制の現状を知りたいと、けいさんの一人暮らし体験に同行しました。

木原さん:「本業は新聞記者でやっているので、きょう感じたことを新聞記事というツールを使って広げていきたい」

江戸川区内で家族と暮らすけいさんは、2年前から2か月に1回ほどのペースで、この部屋で2泊3日の一人暮らし体験を続け、自立を目指しています。

一度に多くの作業をこなすことが苦手なけいさん。メイク道具は用意してきたものの、化粧落としを忘れてしまい買いに行くことに。しかし、この時も、けいさんは買い物のことで頭がいっぱいになり、上着を忘れてしまいました。そんな彼女を木原さんはそっとサポートしていきます。

障害がある人が自立するためには周りの理解や手助けが必要ですが、支援体制は十分とは言えないのが現実のようです。

けいさんは短期間のショートステイではなく、親元を離れて長期的に暮らすグループホームへの入居を希望していますが、現在、10人ほど順番を待っている状態です。

けいさん:「でも10人待ったら何年待つのかなと。そうなったら行けないから。他の施設の人には他を調べた方が早いんじゃないのって言われちゃったりして」

自立に向けて模索するけいさん…その思いを木原さんは丁寧に聞いていきます。

木原さん:「お父さんとお母さんも高齢になってきているし、自分に楽しいことを考えていくために、一人で暮らしてみようかなと思ったのかな?」

けいさん:「そうですね。家族と離れて施設でちゃんと育ったほうがいいのかなと。自分で自分を育てたほうがいいのかなと思って」

「自分で自分を育てる」…けいさんは一歩ずつ、一歩ずつ、その道のりを歩んでいます。

けいさん:「いろいろな人と出会うためにやっていこうかなと思っているから。楽しく生きるのが一番」

けいさんの話を聞いた木原さんは・・

木原さん:「すごくワクワクしていて、一人暮らしの練習をするということ。でも彼女も言っていたように一人暮らしするためのグループホームに入居するための順番待ちが多かったりだとか、もう少し担い手づくりとか基盤グループホームが増えるとか、そういったところも含めて全ての合わせ技でやっていくべきかなと改めて思いました」

それから数日後、東京新聞本社では、新聞の紙面を検討する会議の場で木原さんが、けいさんと過ごした時間から見えてきた「課題」について伝えたいと提案していました。

木原さん:「やっぱりもっとこういった(支援の)仕組みを広げるために、している行政としていない行政があるので、もう少し取り組みが広がるような形で記事を書いていったほうがいいかなと」

そして今月6日、出来上がった紙面には…

記事:「支援が必要な人にとって、一人暮らしをすることは時に命懸けの大冒険にさえ値する。だが、少し支える存在が、それを危険なものからワクワク感に変え、自立につなげられる。ただ、その一歩を応援するショートステイ事業を充実させる自治体は驚くほど少ない。誰もがハッピーに暮らせるためには、社会の理解が欠かせない」

© TOKYO MX