社説:臨時国会の閉会 空疎さ増す首相の言葉

 首相の言葉がまったく響かない。日本の政治に対する不信の霧は濃くなる一方ではないか。

 臨時国会の閉会を受け、きのう岸田文雄首相が記者会見した。

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑について、首相は「総裁として先頭に立って自民党の体質を一新する」と述べた。関係者を外すため、きょう閣僚などの人事を行う。

 だが、それ以外は事実確認や派閥パーティーの当面自粛など、既に示した対応をなぞるにとどまった。驚くばかりの中身のなさだ。

 裏金づくりと使い道の独自調査をはじめ、企業・団体献金の「抜け穴」を防ぐ政治資金規正法の改正や、派閥解体を含む党改革に踏み込むことこそ求めたい。

 発足2年を迎えた岸田政権の迷走が、際立った臨時国会である。

 支持率低迷から脱却を目指して内閣を再改造したが、10月20日の開会から2週間余りで3人の政務三役が辞任した。公選法違反を問われる法務副大臣や税金滞納の財務副大臣など、国会で「不適材不適所」と酷評された。

 自民党派閥の意向を優先した人事のツケというほかない。

 首相は所信表明で「経済」を三唱し、税収増を国民に「還元」するとして減税を打ち出したが、財務相は増加分を使用済みと答弁。減税には国債(借金)が必要と認め、首相の甘言を実質否定した。

 13兆円超の巨額な補正予算案も約7割を借金で賄い、「平時に戻す」はずの財政規律は緩んだまま。大阪・関西万博の建設費膨張なども問題化したが、提出から10日足らずで成立させた。

 物価高を助長しかねない減税に執着するのは、防衛費「倍増」や「異次元」少子化対策に伴う国民負担増への批判をかわすためではないか。そんな野党の質問を、首相は「デフレ脱却のため」「実質的に負担は生じない」などとはぐらかし続けた。支持率が2割台に落ち込んだのは、政権の維持に汲々(きゅうきゅう)とする首相の保身を国民が見透かしたともいえよう。

 極め付きが国会終盤でまたぞろ浮上した「政治とカネ」の問題だ。裏金疑惑は最大派閥の安倍派に焦点が当たっているが、背景にあるのは政治資金パーティーを通し、企業・団体から巨費を集める組織ぐるみのシステムだろう。

 二階派の資金還流、岸田派の収入過少記載も根は同じであり、首相がメスを入れるべき積年の悪弊である。小手先の人の入れ替えでは済まない。

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