VARの誤審が生み出す問題…信頼を失うことで元プレミア主審が抱く懸念「多くの審判が試合を離れることになる」、トルコでは殴られる事件も

かつてプレミアリーグで主審を務めたクラッテンバーグ氏[写真:Getty Images]

近年相次ぐVARの誤審が大きな問題となっているプレミアリーグ。元プレミアリーグ主審のマーク・クラッテンバーグ氏は、そのミスが審判団を試合で笛を吹かなく未来がある懸念を口にした。
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クラッテンバーグ氏は、プレミアリーグで2004年から2017年まで主審を務め、リーグを代表する主審として知られていた。

その後、サウジアラビアサッカーに身を置き、サッカーレベルの向上を目的に審判委員長などを務めていた。

クラッテバーグ氏が笛を吹いていた時代はVARは導入されていなかったが、VARが導入されてから人為的なミスなどが連発。大きな批判を受ける事態となっている。

イギリス『BBC』に対しクラッテンバーグ氏は「今抱えている問題は、選手たちがシステムを信頼していないことだ」とコメント。VARのテクノロジーが救うはずが、逆に疑念を抱かせてしまっていると語った。

「審判はテクノロジーによって正しい判定が下されるはずだと知っているため、フィールド上で判定を下さないこともあると思う」

「ただ、それではVARはほとんどの週で正しい判定を下しているのだろうか?正しい場合もあれば、そうでない場合もある」

「つまり、それが選手間に緊張を生んでいるということだ。そして選手たちは結果重視のスポーツであり、非常に緊張しており、その怒りや反対意見を審判にぶつけてしまうものだ」

今季だけでも、複数の誤審が発生。選手や監督も試合後のコメントで不満を口にするのが我慢できなくなるほどの事態が起きている。

クラッテンバーグ氏は「審判には安全な環境で仕事をする権限が必要だ。そうでなければ多くの審判が試合を離れることになるだろうし、残念ながら審判なしではサッカーの試合は開催できないだろう」とコメントした。

また「私はピッチ上での反対意見で問題になったことは一度もなかった。なぜなら、選手たちはほとんどの場合、主審の決定を尊重していたからだ。おそらくVARが導入される前はだ。VARによって選手間には緊張が生じたと思う。彼らは決定を下すかどうかだ」と語り、テクノロジーの導入が悪影響を及ぼしている部分もあるとした。

加えて、先日はトルコのスュペル・リグで試合後に判定に不満を持ったアンカラグジュのファルク・コジャ会長が、ハリル・ウムット・メレル主審の左頬にパンチを浴びせる事件が発生した。

クラッテンバーグ氏はこの事件を受け「あれを見るのは恐ろしい。これはトルコのトップリーグで審判をしているFIFAの審判だ」とコメント。「たとえ審判が間違いを犯したとしても、それが会長の方な反応を引き起こすべきではない。これは間違いなくトルコ、そして世界中のサッカーを交代させた」と語り、大きな問題になっていくだろうと語った。

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