安倍派一掃

 〈1日で終わらせようとすると無理が出る。まずプランを立てること〉〈順番は上から下へ〉〈細かいところに時間をかけても、全体的にはきれいになった感じがしません〉…大掃除の季節。本紙のデータベースで「達人」のアドバイスを見つけた。24年前の記事。新鮮に読んだ▲国会の閉幕を待って岸田文雄首相が大掃除に手をつけた。「自民党の体質を一新すべく先頭に立って闘うのが自分の務め」と渾身(こんしん)のファイティングポーズを見せた。「闘う」や「火の玉」に文字で書くほどの力強さを感じなかったことはひとまず措(お)く▲最初に闘う相手は裏金疑惑の震源地となった安倍派らしい。ほうきで掃くように閣僚4人の更迭に踏み切った。党の要職からも同派の有力議員が去る▲「細かいところ」とは言うまい。最大派閥との決別にはそれなりに勇気が要るだろう。“トカゲの”と呼ぶにはしっぽが大きい▲ただし、そこだけやっても「きれいになった感じはしません」。皆が知っている。疑惑は安倍派固有の問題ではない。病巣は深い。首相の本気が問われている▲大切なアドバイスを書き漏らしていた。「一度やり始めたら途中で投げ出さないこと」。しかし、念押しせねばならない。悠長な取り組みが許されるだけの時間は今の政権には与えられていない。(智)

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