モリゾウ「やっとスタートポイントに立てた」新加入3名&海外挑戦2名への期待とドライバー育成への3つの想い

 12月12日に都内で開催されたToyota Gazoo Racongの2024年国内モータースポーツ体制発表会。スーパーフォーミュラ、スーパーGTにはホンダから移籍した福住仁嶺に大湯都史樹、そしてFIA F2(F2)で今年のチャンピオンに輝いたばかりのテオ・プルシェール(フランス出身)が新たにトヨタ・ファミリーに加わることになった。新たに加わった3人、そして国内から新たに世界へ挑む平川亮(マクラーレンF1リザーブドライバー)、宮田莉朋(FIA F2/ロダン・カーリン)にモリゾウこと豊田章男トヨタ自動車代表取締役会長はどのような期待をしているのか。

 昨年から国内モータースポーツ界を賑わせる話題を提供しているトヨタ/GR陣営。近年では縁の遠くなったF1、そしてF2へドライバーを参戦するだけでなく、国内ではライバルのホンダ陣営から国内トップドライバーの若手有望株を2名、獲得することになった。そのアグレッシブな体制作り、そしてドライバーの希望や成長を考慮したドライバーファーストの視点で、2024年には彼らにどのような期待をしているのか。Youtubeでの中継が終わった会見後、メディア向けのカコミ取材でモリゾウ氏が答えた。

「『世界で一番速く走っている男だ、女だ』と言われたいのがレーシングドライバーだと思います。そうした時に、メーカー/マニュファクチャラーとしてはどういうモノを作っておけば良いのかということに対して、やはり世界選手権への道をしっかりと拓けておくこと、そして『このマシンだったら勝てる』というクルマを供給すること、そして若い世代の時にチャンス、機会を与えること、この3つを最低限でも整えておかないとモータースポーツが持続的に育っていかないという想いがあります。ですから、そういう意味で今までの中でやっとGAZOO Racingがその3つのスタートポイントに立てたのではないかなと思っております。ですからぜひ、世界に羽ばたかせるための応援をしていきたいなと思っております」とモリゾウ氏。

 さらに具体的に、海外の新しいカテゴリーに挑むふたり、そして福住、大湯、プルシェールについても言及した。

「今回、トヨタがF1への道ということで平川選手に、トヨタでもこういう道があるんだと感じてもらえたと思いますし、宮田選手も日本でチャンピオンを獲ると世界に挑戦できる、世界への切符がもらえるんだというように、多くの方に感じて頂けたというふうに思います」

「ホンダでずっと育成をしてきたふたりも、今まではホンダエンジン、これからはトヨタのエンジン、全日本(スーパーフォーミュラ)選手権の中で日本代表の両メーカーのエンジンを経験したドライバーが世界で戦ってほしいなあと思いますし、F2チャンピオンが来日して参戦するわけですが、スーパーフォーミュラという場所をF1の登竜門として選んで頂いた、選択肢のひとつとしてスーパーフォーミュラの戦いの場が入ったというのは、このスーパーフォーミュラを開催している国としては大変、喜ばしいことなのではないかと思っています」

 サーキット・レースでモリゾウ氏が希望する体制が出来つつあるなか、ラリーでは先行してその体制が進められている。

「ラリーに関してもWRC(世界ラリー選手権)を筆頭に全日本ラリーでクルマの開発、そして来年からはRally2でも参加すると思います。Rally2はおもにプライベーターの方が出てくれると思いますし、また、若手育成のプログラムもあるので、ラリーの車両面、サーキット面、その両方で体制が出来つつあるのではないかなと思います」

 さらに会見ではその後、プルシェールについての話題になった際、モリゾウ氏は平川のF1リザーブドライバー就任について相談した、チームインパルの星野一義監督とのエピソードを話した。

「私としては平川選手がインパルにこれまでいて、マクラーレンのリザーブドライバーになることで来年のスーパーフォーミュラには1戦くらいしか出ることができないということを聞いて、やはり星野さんのチームには申し訳ないなと。ということで星野さんに直接お会いして、いろいろお話させて頂きました」

「そうしたところ、星野さんはやはりドライバーご出身ということもあって、『平川にとって、こんないい道はない』と、ものすごく応援をして頂きました。そういう意味で今回、F2チャンピオンが平川選手の後にインパルに入ってきたというのは、星野さんもお喜びになっていると思います。スーパーフォーミュラ全体を見ても、F1に近い実力のある選手が乗るんだなというイメージで多くの観客の方にとって、来年の楽しみが増したのではないかという意味で、私は少しホッとしております」

 体制発表会の冒頭で『私は負けることが嫌いです』とモリゾウ氏が述べたように、プロのレーシングドライバーは常に結果が求められる。だが、その結果とともに、トヨタ・ファミリーのドライバーにはそれぞれの特性に合わせてドライバーとしての成長や挑戦が求められ、さらにはドライバー視点でのより良いクルマ作りの開発能力も必要とされる。一方、Toyota Gazoo Racing Europwの中嶋一貴副代表、そしてWECチーム代表を兼任する小林可夢偉のように、第一線を退いたドライバーやベテランを厚遇して、その能力を組織に還元して活かす取り組みも見える。ドライバーを中心にしたモータースポーツ活動とモリゾウ氏の理念、そしてその成果が徐々に結実しつつあるようだ。

全体会見の後、メディアのカコミ取材で自身の想い、メディアからの質問に答えたモリゾウ氏と高橋智也Toyta Gazoo Racingプレジデント

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