保護のツシマヤマネコ放獣へ 来春にも野生に

国道上で保護された「ひかり」=7月、対馬市上県町(対馬野生生物保護センター提供)

 国天然記念物ツシマヤマネコの「野生復帰」を担う環境省ツシマヤマネコ野生順化ステーション(対馬市厳原町)は15日、市内で保護した雄1匹を来春にも野生に戻す方針を明らかにした。施設で復帰訓練をした個体を放獣するのは2013年の開設以来初めて。
 野生復帰は、飼育下で繁殖させた個体を訓練して自然に戻す事業。今回は異なるケースだが、野生順化ステーションの谷口晃基・自然保護官は「今回得た知見は将来の野生復帰に生かせる」としている。
 ツシマヤマネコは対馬にのみ生息する固有種。推定90~100匹で絶滅が危惧されている。国は1996年から全国の動物園などと協力して飼育下繁殖事業を開始。これまで計48匹が1歳以上まで成長した。
 野生順化ステーションは同町南部の豆酘(つつ)地区にあり、さまざまな環境にヤマネコを適応させるため、池や川を再現した巨大ケージを6カ所(計約2.6ヘクタール)に設けている。これまでは島外の動物園などで生まれた個体を訓練し再び戻したことがある。
 今回放獣されるのは「ひかり」。7月、同市上県町の国道上でうずくまっていたところを同省対馬野生生物保護センター(同町)に保護された。当時推定で生後2カ月ほど。交通事故に遭ったとみられ、外傷はなかった。
 通常、事故に遭った個体はセンターでの治療やリハビリを経て放獣される。ひかりはまだ幼く、自然界を生き抜く力を養うため、10月に野生順化ステーションに移され、エサの捕獲や木登りの訓練を重ねていた。

© 株式会社長崎新聞社