「末期がんで余命半年」から1年半 叶井俊太郎氏が映画祭登場 河崎実監督「オレがゾフィーだったら命を1個あげたいよ」

漫画家・倉田真由美氏(52)の夫で、映画プロデューサーの叶井俊太郎氏(56)が16日、都内で開催中の「第1回東京国際叶井俊太郎映画祭」(17日まで)で、観客の前に姿を見せた。

自身が手がけた映画「日本以外全部沈没」(河崎実監督)上映後、トークショーに出演。2022年6月にステージ4の膵臓(すいぞう)がんで余命半年と宣告されているが、自身の冠がついた映画祭の開催に「末期がん患者がこんなことしてたらダメだろう。これで悪化しても死んでもしょうがないかな。本望ですよ」と毒づいた。

抗がん剤治療や手術を拒否し闘病する叶井氏のもとには、仕事が殺到しているという。「めっちゃ忙しいんだよ。忙しい上に締め切りが厳しい。来週まで生きているかどうかわからないんで。再来年の春先まで仕事あるから。死ねないね」とジョークを飛ばした。

公開中の映画「恐解釈 桃太郎」(鳴瀬聖人監督)のエンドロールには「叶井俊太郎に捧ぐ」と入っているという。「アレは、オレも死ぬと思って夏場に入れたんですよ。気づいた人はツッコむね。『生きてんじゃん』って」と、ポジティブに予想を裏切り続けている。

叶井氏に手招きされ、客席にいた河崎実監督(65)もステージへ。河崎氏は「叶井さんは常識を超えた男だ。オレの映画を配給、宣伝してくれる人なんていなかった」と声のトーンを上げた。特撮テレビドラマ「ウルトラマン」で、命を2つ持ってきたウルトラ兄弟のゾフィーに例え「オレがウルトラマンのゾフィーだったら、命を1個あげたいよ。まだまだオレにバカなことをさせてくれよ。あんたがいなくなったら誰がやってくれるんだよ。寛解してくれ。常識を超えてくれよ」と訴えた。

今後の抱負を聞かれた叶井氏は「抱負なんか無いよ。いつ死ぬかわからないんだから。抱負って言われても、死ぬからね」と切り返した。河崎氏は「今回あんたのおかげでね、やっぱり命って大事で、毎日毎日ちゃんと生きなきゃねって改めて思い知らされましたよ」と、悲愴(ひそう)感なくパワフルに闘病する叶井氏の姿に心打たれていた。

(よろず~ニュース・杉田 康人)

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