50代女性、美顔器に没頭した理由は? 角張ったフェイスライン、同級生と並んだ写真に嫌気「はさみで切り落とした」

いわゆる顔の「エラ」がコンプレックス。鏡を見るたび「なくなったらいいのに」と思っていた=神戸市内

 私の顔の形は四角く、子どものころからとても気にしていました。顔写真のエラ部分を黒く塗りつぶしたり、はさみで切り落としたりして、「こんな卵形の顔になりたかった」と憧れたものです。(ルッキズムを巡るアンケートへの回答)

 神戸市に住む50代の美容師斎藤ゆきえさん(仮名)は、角張ったフェイスラインがどうしても受け入れられなかった。

 コンプレックスに対する意識は中学でピークに達した。集合写真を見たくないのに見てしまう。同級生と並んだ自分の顔に嫌気が差し、ため息が出る。「角度によっては本当に真四角に写るんですよ」

 部屋で一人、想像を巡らせた。「この角がなかったら、私の顔ってどうなんだろう」。思い立ったようにはさみを探し、輪郭がなだらかなカーブになるよう、切り落とした。ペンで黒く塗りつぶしてみたこともある。

 切ったり塗ったりしていない写真と並べ、見比べた。「この形だったらいいのになぁ」「やっぱり、ない方がいいよなぁ」とひとしきり考え込み、写真はごみ箱に捨てた。その繰り返しだった。

 中学の友人に「スパンクに似ているね」と言われたことがある。「おはよう!スパンク」という漫画に登場し、いつも笑顔で愛らしい犬のキャラクターのことだ。スパンクの顔は真四角だった。

 「正直、複雑でした。スパンク自体はかわいいので。ですけど、やっぱり私の顔は四角いんだなって」

 傷つけられた、とは思わなかった。友人の言葉や表情には、一切の悪意を感じなかったからだ。ただ改めて「やっぱりそうだよね。私の顔は四角くいよね」との思いを強固にした瞬間ではあった。

■誰のための美顔器?

 

 「いつしか、劣等感のようなものが染みついてしまったのかもしれませんね」

 幼少期から容姿に自信がなかった。大人になっても、周りの友人は自分より「美人」に思えて仕方なかった。「やっぱり私が一番ブサイク」という気持ちがいつもあった。美容室で働き始めても、どうしても鏡で客と自分の顔を見比べてしまった。

 年齢を重ね、あの頃のように写真を切ることはもうない。今も卵形のフェイスラインに憧れ、鏡に顔が映ると「やっぱり、この角はないほうがいい」と思う。それでも昔よりは、自分を客観視するようになった。

 「なんかもう、これが自分なんだって思えるようにはなりました。ほとんど諦めみたいなものですけど」

 30歳くらいの時、美顔器を買い、無心で顔にあてていたころ。友人から「なんでそこまで一生懸命に美顔器をあてるの?」と聞かれたことがある。正直、とまどってしまった。

 「え、自分のためだけど…って。だって、人のためにするものじゃないですよね」

 そもそもなぜ、顔の形があれほどまでに嫌だったのか-。改めて自問しても、うまく言葉が見つからない。「とにかくなんか嫌だ」という感覚だった。

 ただ一つ、はっきりと分かることもある。

 「他人の目というよりは、自分の目でしたね。断然自分です。どこでよしとするのか。それは結局、自分次第ですもんね」

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 神戸新聞のシリーズ「すがたかたち ルッキズムを考える」では、容姿を巡る体験談やルッキズムに対する考えを紹介しています。私たちはなぜ、人の容姿にあれこれと口を出してしまうのか。なぜ、見た目がこんなにも気になるのか。どうすれば傷つけてしまう前に立ち止まることができるのか-。そんな問いについて考えながら、見た目にコンプレックスを抱く「当事者」らにお話をうかがいました。(大田将之)

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