生まれ育った「旧小国家住宅」を民泊に ヒノキ風呂や日本庭園、人力車も 福崎、末裔の男性が改装費募る

「非日常を楽しめる空間にしたい」と話す山田威史オーナー=福崎町山崎

 兵庫県神崎郡初の国登録有形文化財「旧小国家住宅」(福崎町山崎)の主屋が来春、1棟貸しの民泊施設に生まれ変わる。10年ほど活用されていなかった主屋を、非日常が楽しめる空間にリニューアルする。費用の一部をクラウドファンディング(CF)でまかなおうと、オーナーが協力を呼びかけている。(喜田美咲)

 旧小国家住宅は江戸時代の庄屋跡で、1871(明治4)年の「播但一揆」の際、農民の身代わりとなって処刑された小国鐵十郎の生家。時代とともに診療所や教会に姿を変えながら、地域を支えてきた。主屋と診療所、長屋門、土塀の4棟が2007年、同文化財に指定された。

 小国家の末裔でオーナーの山田威史さん(62)が建物の維持管理費に当てるためテナントを募集すると、18年以降、アロママッサージ店やオーガニックカフェなど5店舗が診療所や長屋門に入居した。土塀は大工仕事に興味のある一般参加者を募り、ワークショップを開いて補修してきた。

 最後に残ったのが主屋だ。山田さん自身が生まれ育った場所で特に思い入れが強く、ここで暮らしてピアノ教室も開いていた母が12年に世を去った後は、手を入れられていなかった。

 しかし、改めて屋内を見渡すと、長く住んでいても飽きが来ない古民家の魅力に気がついた。「ここに来たら、みんな泊まりたくなるだろうな」。そんな直感から、1棟貸しの民泊にすることを決めた。

 入り口には母が愛用したグランドピアノを置いた。和室2部屋に加え、ベッドやキッチンがある洋室も備える。本棚には診療所時代の医学に関する書籍や往診箱。ヒノキの浴槽を置いた風呂場からは日本庭園が眺められる。家にあった人力車も展示する予定だ。

 改装費は総額数千万円に上り、貴重な歴史遺産を次代につなぐため、CFに挑戦することにした。目標は300万円。3千円から支援でき、返礼品にはテナント提供のパンやランチ、土塀ワークショップの参加権などを用意している。

 山田さんは「今やらねばという危機感がある。文化財の活用事例として広まればうれしい」と話す。CFは来年1月28日まで、専用サイト「キャンプファイヤー」で募集中。CFへの問い合わせはプロジェクト広報のオフィスカジヤノ(TEL0790.35.0673)、同住宅については山田さん(TEL090.1588.2383)へ。

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