冬の風物詩、街角募金「社会鍋」神戸で今も キリスト教団体・救世軍120年 寄付減少、キャッシュレス化も影響

創立120周年を迎えた救世軍神戸小隊。牧師の立石真崇さん(左)、友理恵さん夫妻は今年も社会鍋に協力を呼びかける=神戸市中央区多聞通4

 〈社会鍋小さき善の音返す〉(山田弘子)。俳句の季語にもなっている社会鍋は、キリスト教団体・救世軍によるクリスマス時期の街頭募金運動だ。18日から大丸神戸店(神戸市中央区)前に立つ救世軍神戸小隊(同)は、今年で開設120年。独特のスタイルも若い世代にはなじみが薄くなっているが、牧師の立石真崇さん(52)は「気に留めて、思いやりの心を呼び起こしてもらえれば」と願う。(田中真治)

 救世軍は1865年に英国で生まれ、世界134カ国に小隊(教会)を置く。94年に米国で失業した船員にスープを振る舞うため、三脚につぼをつるして募金箱とした「クリスマスケトル」が社会鍋のモデルだ。

 日本の救世軍は95(明治28)年に活動を始め、社会鍋は1909年に初めて、東京の街角に設置された。神戸小隊は03年に開設。社会鍋に関する資料は残っていないが、「全国的な取り組みなので、早くから着手していたはず」と立石さんは推測する。

 立石さんは2011年に着任。救世軍を特徴づける制服・制帽に紅白のたすき姿で、年末には街頭で募金を呼びかけてきた。

 「『親や祖父母に大事なものだから協力するように言われた』という方が何人もいる」。音楽もつきもので、立石さんはコルネット、妻友理恵さん(55)はアコーディオンで賛美歌などを奏でる。ほかの教会の信徒が加わっていたこともあり、「いろんな宗教が共生している神戸らしい」と話す。

 新型コロナウイルス禍でも感染対策をして続けてきたが、募金額は減ってきている。時間を短縮したことや、人通りが減ったこともあるが、キャッシュレス化の影響も。「買い物帰りに手元の小銭を、という形が変わりつつある」と頭を悩ませる。

 浄財は災害支援のほか、地元の児童養護施設の支援や、JR神戸駅周辺の路上生活者への差し入れなどに充てている。「大きなことはできなくても、人の役に立てる喜びを分かち合いたい」。冬の風物詩は今も、小さな善意を待っている。

 社会鍋は29日まで(土日曜休み)の午後1~4時。救世軍公式サイトではオンライン社会鍋も実施する。神戸小隊TEL078.341.4594 【救世軍】英メソジスト教会牧師W・ブース夫妻がロンドンで伝道団体を設立し、1878年に「救世軍」と改称。軍隊の様式を取り入れ組織力を高め、社会事業を進めた。国内では、日本人最初の士官(伝道者)山室軍平を先頭に、遊郭の女性を解放する「廃娼(はいしょう)運動」や児童保護、結核療養所創設などに取り組んだことで知られる。11月30日は「社会鍋の日」。

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